子どもの意思も人生も子どものもの

 そして、いったん同意をしても「やっぱり違った」「やっぱり嫌になった」ということはありえます。ですから「同意」は途中で取り消して断ってもいいのです。これは身体的な関係に限られたものではありません。

 バウンダリーはどのような人間関係にも存在します。大人は、つい子どもたちの言動を制して、自分が正しいと思うことを押しつけてしまいがちですが、親子関係にもバウンダリーは存在します。

 どんなに子どもを思っての親の提案でも、「結果的に失敗することになったとしても、これは自分で判断したい」「親の意見とは反対だ」と子どもが思うことはあるのです。子どもが小さいうちには危険を冒さないようにと親が止めなくてはならないような状況はもちろんあります。しかし、子どもに選択権を受け渡してもいい場面も実は多いのです。

 子どもの人生は子どものもの、子どもの意見も体も子どものもの、と親として子が引いたバウンダリーを越えてはいけない場面もあるのです。大人でも子どもでも、他人にリスペクトされる感覚は、安心感を生み、嬉しいものです。どんなに親しくても、愛しているとしても、心と体のボスはあくまでもその人自身なのです。

 自分の意見や体は自分のもの― 。私の子どもたちが受けている同意教育は、主体性のある生き方や、自尊心を身につけるためにとても重要な教育だと感じています。

 そして、多くの人が「他人の靴を履いてみる」ということを意識するようになれば、子どもも大人も自分とは違う意見を持つ人にも今よりも安心して自分の思いを伝えることができ、のびのびと暮らせる社会になっていくのではないでしょうか。

「同意」の概念は、カッとなったり、相手を攻撃したくなったりしたときのストッパーにもなるものだと思います。