企業の再生可能エネルギーの調達を巡る悩みが深まっている。「もしトラ」によって脱炭素化のスピードが鈍化するとの観測も出る中、再エネの需給環境の見立てには必ずしも共通解がない。一方で、多くの企業が掲げるカーボンニュートラルの中間目標設定年=2030年までは、あと5年強とタイムリミットが迫る。必要とする再エネを確実に、そして費用対効果をも加味しながら合理的に調達するために、企業が今だからこそ知っておくべきノウハウについて追う。
脱炭素の中間目標を掲げる2030年まで
「あと5年強もある」と考えてはならないワケ
「もしトラ」。ドナルド・トランプ前米大統領の再選可能性が浮上し、そんな言葉が方々から聞かれるようになった。こうした中、企業がひそかに悩みを深めているのが、再生可能エネルギーの調達についてだ。
二酸化炭素を排出しない太陽光や風力といった再エネの調達は、脱炭素化を実現するための切り札だ。だが、もしトラが現実のものとなれば、世界的な脱炭素化のスピード自体が鈍化しかねない。「世の中の動向を踏まえると、再エネをいつ、どうやって、どのくらい調達することが適切なのか」が、ますます見極めにくい状況となっているのだ。
一方で、“タイムリミット”は刻一刻と迫る。少なくない企業が、世界の脱炭素化の流れは不可逆的だとみて、社会や投資家に対し「2050年カーボンニュートラル」を宣言。30年に中間目標を掲げているが、その30年までに残された時間はわずか5年強である。
「競争優位性を拡大するべく、30年に向けて戦略的に再エネを調達するならば、すぐにでも詳細な調達計画とアクションプランを策定・実行するべきタイミングだといえます」。コンサルティング会社、KPMG FASで、企業の脱炭素化の主要施策として位置付けられる再エネ調達の支援を行う鵜飼成典執行役員パートナーはそう語る。
というのも、再エネ調達には乗り越えなければならない壁が多く、意思決定や調達実行までに一定の時間がかかるからだ。エネルギーの事業環境は、原子力発電所の再稼働の是非といった複雑な政治的要素の影響を大きく受けるため、先読みが難しい。そのため、再エネも供給量や価格競争力の予測でさえ容易に行うことができない。
先を見極めにくい環境下で、必要とする再エネを確実に、そして費用対効果をも加味して合理的に調達するために、企業はどんな情報を押さえ、どう動くべきなのか。
次ページ以降では、KPMG FASのエネルギーのプロたちに、今だからこそ知っておくべきそれらのノウハウについて詳細に明かしてもらう。