稲盛和夫氏Photo:SANKEI

ビジネスの世界では無視されがちな「運の良しあし」という要素は、実は人生の成功に大きな影響を与えている可能性がある。「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏も、「運も実力のうち」と断言している。さらには「責任者たる者、運も良くなければ駄目だ」とまで言い切っている。その理由とは?(イトモス研究所所長 小倉健一)

成功の秘訣について聞かれて
「運が良かっただけ」と答える人はまれだが…

 経済誌の編集部に13年もいて、ビジネスの成功事例や稲盛和夫氏をはじめとして、成功したリーダーの後ろ姿をずっと追いかけ続けてきた。どうすれば成功するのだろう。どうすればビジネスがうまくいくのだろうと。

 これは考えてみれば当たり前のことなのだが、実力や努力という自分に関することであれば変えるチャンスがあるのかもしれないが、運や自分の環境についてはいかんともし難い。自分の環境も何とか変えることはできるかもしれないが、「運」についてはどう考えてもいかんともし難いものだ。

 そんなことを頑張っても仕方がないことは、特に優秀なリーダーであればあるほど気付くはずで、運の要素については関心を寄せなくなる人もいる。私たち取材する側が、そのリーダーに「成功の秘訣」を聞いたときに、彼らの口から「運が良かっただけ」などという言葉はめったに出てこない。謙遜して口に出す人がいるのかもしれないが、ほとんどの人は自分の実力と努力がいかに秀でたものであったかを答えることになる。

 しかし、実際には「運」は私たちの人生のものすごく大きな部分で影響しているようだ。

 そして、京セラ、KDDI(当時、第二電電〈DDI〉)を創業し、日本航空を復活させたことで、「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏も「運も実力のうち」と考えていたようだ。

 人生と運に関して統計的な手法で迫った論文と、稲盛氏が残した言葉で、運について見つめ直してみよう。