映像の不必要なディテールは
むしろ学習の妨げになる

 似たような点で、マルチメディアの映像コンテンツの制作者側や、子どもの教材を選ぶ親御さんに、ぜひ知っていただきたいことがあります。

 良かれと思ってかわいいキャラクターなどを学習コンテンツに使っている制作者がいますが、むしろ逆効果だったりします。内容と関連性がない場合、キャラクターに気を取られてしまって、理解度が落ちてしまう場合が多いのです。

 だからといって、内容と画像が関連していれば「何でもOK」というわけでもありません。

 例えば、小学生がカブトムシの生態を学習するとしましょう。幼虫が蛹さなぎになって成虫になる「変態」のプロセスを学んでもらいます。

 そんな時、音声での内容説明とともに、非常にリアルな8Kで撮ったカブトムシの映像を流したとします。制作者の意図としては、「リアルなイメージを直接与えることで、学習効果が上がってほしい」。

 しかし、実はこれも、逆効果。カブトムシのリアルな映像よりも、図式化したシンプルな画像を使う方が学習効果が高い、という研究結果があるのです。図式化したシンプルな画像は、カブトムシの変態に焦点を置いて、その説明に重要な点を抜き出します。

 一方、カブトムシ自体の8K映像では、変態自体とはまったく関係のないディテールが目に入ってきてしまいます。そのため変態の本質を理解すべき時に、「わあ、すごい色だな、すごく強そうだな」などとリアルさに圧倒されて、ワーキングメモリーの無駄遣いにつながりかねないのです。

 要するに、不必要なリアルさが、学習の妨げになってしまう。内容に関連がないディテールが目に入ってしまい、大事なことが頭に残らなくなるということです。