現状のまま停戦すれば
「権威主義国家」が付け上がる

 そして、G7の国力や経済力は、かつてほど盤石ではなくなっている。
 
 国際通貨基金(IMF)によれば、世界の名目GDPに占めるG7のシェアは、ピーク時の86年は68%を占めていたものの、22年には43%まで下がった。そして、44%を占めた新興・途上国に初めて追い越された(日本経済新聞電子版『老いゆくG7「幸福追求」 新興国に経済規模かなわず』を参照)。

 このうちインドなどの新興・途上国は「グローバルサウス」と呼ばれる。「サウス」とは、かつて新興・途上国が南半球に多く位置していたことに由来する。それが今では、国々の位置を問わず、国際社会での影響力を急速に増している新興国全般を意味する言葉となっている。

 ウクライナ紛争においても、グローバルサウス諸国がロシアの石油・天然ガスを輸入することで、ロシアに対する経済制裁の効果を弱めてきた。また、国連決議などの場面でも強い影響力を発揮するなど、グローバルサウスの動向は無視できないものとなっている。

 繰り返しになるが、この状況下でウクライナ戦争が停戦となり、プーチン大統領が「勝利宣言」をすると、グローバルサウスに属する「権威主義的指導者」が賛同する危険性が大いにある。

 この場合、理論上はどれだけ「長いスパン」で優位にあったとしても、NATOを「敗者」と見なす国際世論が盛り上がるかもしれない。日本など、NATO未加盟の自由民主主義陣営にも冷ややかな視線が向けられるだろう。自由や平等、基本的人権の尊重といった、自由民主主義の価値を否定する動きが加速する懸念もある。

 独裁的指導者の強権的手法によって、隣国とのもめ事を「力による一方的な現状変更」で解決できたという事例が、歴史に残ることの弊害は大きい。他の権威主義的国家が踏襲しようとした際に、自由民主主義陣営が抑えつけるのは難しくなる。

 NATOはこの「最悪の事態」を避けたいはずだ。そのためにも、「どういう形で停戦するべきか」を真剣に模索することが、NATOにとって喫緊の課題ではないだろうか。

 その上で最も望ましい形は、「ロシアが侵略したウクライナ領を完全に取り返すことで停戦する」ことだろう。先述した「支援の小出し」をやめ、NATO軍をウクライナに全面投入し、一気にロシア軍を追い出すのである。ただし、ロシアにそれ以上の攻撃を加えることはせず、ウクライナから撤退させた段階で停戦に向けて交渉する。

 実際、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は今年2月末、ウクライナ支援に関する国際会合で、NATO諸国の地上部隊をウクライナに派遣する可能性を「排除しない」と発言した。

 しかし、マクロン大統領の発言に、米国・英国・ドイツ・ポーランドなどの加盟国は「ウクライナに派兵せず」の姿勢を示した。フランス政府高官までもが、大統領の派遣構想は地雷除去や国境警備、ウクライナ軍の訓練といった非戦闘部隊に関するものだと補足説明した。このエピソードからは、NATO側が一枚岩になり切れていないことがうかがえる。