一時の閲覧数稼ぎのために、企業としての社会的信頼が著しく損なわれているのだとしたら、やればやるだけ、企業は着々と顧客離れを引き起こしてしまっていることになる。長期的な事業の存続性を、マスメディアは自ら危うくし続けているのだ。

 どういうことなのか。

 そこに説明を与えてくれる論理が、“近代マーケティングの父”フィリップ・コトラー教授が、自らが主導した20世紀の“顧客志向”を、自ら否定すべく提唱した「マーケティング3.0」である。

「顧客志向」のマーケティングに
欠けていたものとは?

 コトラー氏は、20世紀後半、この社会にマーケティングという概念を普及させた、その張本人だ。

 彼は20世紀における変化について、顧客志向のマーケティング概念が普及する前の時代を「マーケティング1.0」、概念普及後を「マーケティング2.0」と表現している。

 マーケティング1.0から2.0への変化を端的に表現するなら「生産者志向から顧客志向へ」である。

 20世紀半ばまでは、企業は、その内部組織上の論理で、自分たちが作りたくて事業効率が高く、儲かる製品を販売していた。

 まだまだ社会に財・サービスが行き渡っていなかった時代。消費者は、良いも悪いもなく、企業から提供されるテレビを、自動車を、鉄道を、電話を甘受していたのだ。

 しかし、時代の変化に伴い、そうした生産者中心の社会のあり方は変わった。