お金は本当は増えない

 それは日本に限らない話で、マハトマ・ガンディーがどうしたら格差をなくせるのかと人生をかけて突き詰めていったんですが、彼がたどりついた結論が「近隣の原理」というものだったんですよ。近くの人が作った食べ物を食べて、近くの人が作った洋服を着て、近くの大工さんが建てた家に住みましょうと。まさにグローバリズムの真逆ですよね。だからガンディーは貿易の自由化に徹底的に反対したし、工場の地方への進出にも反対したんです。

 資本主義に対抗するひとつのモデルとして、私はコロナになってからの3年間で社会実験してきました。うちは東京から50キロぐらい離れているんですが、電気は太陽光パネルで作っていて、60坪ほどの畑を借りて野菜を20種類くらい作っています。昨年の11月にがんの宣告をされ抗がん剤治療で農作業ができなくなったのですが、まだコミュニティーが生きてるなと思ったのは、近所で一緒に畑をやっている仲間たちが、うちの畑の作業をしてくれたんですよ。そういうのって、大都市にはないんですよ。

 畑で採れた野菜は、周りの人と物々交換していろんな野菜が手に入る。そこは金銭取引ではないですから消費税も取られない。でもね、本来はそういう暮らしをずっと日本人はしてきたわけ。だからそっちに戻そうと。

 実は今、私や康平の名前や写真を無断で使って投資に誘うニセの広告がインスタグラムやフェイスブックに出ていて、被害者の人からメールが来るんです。犯人が一番悪いのは確かなんだけれど、投資をしたら3カ月で10倍になります、なんていうのにおかしいと思わずみんなが乗っかっちゃっている。それが今株式市場にも蔓延しているわけです。ちょっと株価が下がると一斉に買いが入る。康平は割高じゃないと言っているけれども。

 例えば、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーという経済学者が、バブル期には企業の利益水準自体が水増しされるということを発見して、それを補正するためのPER(株価収益率)というのを提唱しているんですが、今、アメリカは40倍近いんですね。これ、だいたい15倍が適正水準とされているんですよ。つまり、今のアメリカの株価は本来の株価の3倍近くも高いんです。だから、利益が出てるから株が高いんだと言っても、その利益自体がおかしいんです。