電動車としてスペックは高水準。電気モーターのみで最大118km走行でき、トップスピードも140km/hに達する。118kmも走れれば日常はBEVとして使える。近年はPHEVのEV航続距離の拡大が著しいが、メルセデスは一歩先んじている。350eでその印象がさらに強まった。PHEVとしては珍しく、普通充電だけでなく、急速充電にも対応しているのも便利な特徴である。

 スタイリングはPHEVだからといってディーゼルと差はない。あえてそうしたのだろう。スポーティでエレガントな内外装はそのままだ、ボディサイズは4725×1920×1635mm。大柄ではあるが、日本でも持て余すほどではない。

 室内は居心地がいい。リアルウッドトリムを採用したインパネは、縦のラインを強調した斬新な印象。大型ディスプレイで構成され、先進イメージも強い。それでいてストレージ類を効率的に確保しているのはさすがである。ラゲッジのフロアは220dに対して少し高くなっており、ラゲッジ容量は220d比150L減の470~1530L。それでも広さは十分。不自由を感じることはなさそうだ。

まさに“電欠”のないスムーズBEV
長距離クルーズを気軽に快適に楽しめる

 走りはBEVとほぼ同じイメージだった。エレクトリックモードで走ると、バッテリー残量がある限り、延々とモーターで走る。アクセルを素早く踏み込んでも、エンジンが始動することはない。しかもモーターだけで440Nmとトルクフルなので、加速力にストレスを感じることもない。

 ちなみに350eは、これ以上アクセルを踏むとエンジンが掛かることをドライバーに知らせるインテリジェントアクセルペダルを装備している。これはモーター走行の限界点でアクセルペダルの抵抗を増やすシステム。モーター走行でもパフォーマンスに優れているので、そこまで踏み込むことは少なく、恩恵は、あまり感じなかった。

 とはいえ、車速域が高くなると、さすがにパワーは頭打ちになる。ハイブリッドモードに切り替えると、同じ感覚でアクセルを踏んでもエンジンがかかり瞬発力が圧倒的に高まる。車両重量は2340kgと重量級ながら、加速フィールはなかなか力強い。

 高速道路を制限速度程度で巡行すると、条件が揃うとエンジンが停止、コースティングする。そこから少しだけ加速しようとゆるやかにアクセルを踏み増しても、なかなかエンジンはかからない。モーターがいい働きをしている。エンジンが再始動してからも、絶妙にモーターがトルクを上乗せしてくれる。少しでも効率よく走れるよう、また不用意にエンジンがかかってドライバーががっかりすることのないよう、緻密に制御していることがうかがえた。

 350eにはバッテリー残量を維持するモードはあるが、積極的にチャージするモードはない。ただし、スポーツモードで走っていると、ゆっくりではあるもののだんだん充電量が上がっていく。

 静粛性は超ハイレベル。電気的なノイズも風切り音やタイヤが発する音もまったく気にならない。このあたりはさすがというほかない。正直、同クラスのBEVを上回るほどだ。

 足回りの完成度も申し分ない。ディーゼルに乗ったときにも感じたが、新型GLCは本当に意のままに快適に走れる。まさにドライバーズSUVである。可変ダンピングシステムを備えたAIRMATICサスペンションが、路面状況や運転状況に応じて、最適な状態を生み出すことが伝わってくる。