それに対してassertiveは、はっきり自己主張する態度をさします。これは、職場などでスムーズなコミュニケーションのために「アサーション・トレーニング」(相手を尊重しながら自己主張するための訓練)が行われるように、肯定的なニュアンスのある言葉です。日本の文脈で、引っこみ思案でなかなか自分の意見をいえない人に対して「遠慮しすぎないで、もっとわがままになっていいんだよ!」などというときは、こちらのほうになります。

 これを踏まえれば、「みんなへのお土産にもらったお菓子、ひとり占めして自分だけで食べちゃおう」という人は「セルフィッシュ」であり、「それはみんなにもらったものだから、わたしにも一個ください」という人は「アサーティブ」ということになりますね。この二つは、他者を省みず自己の利益だけを主張するのか、他者の利益も認めたうえで自己のいい分も主張するのかという点で、まったく別物です。

 でも日本語ではこれが混同され、「強く主張すること」が十把一絡げに「わがまま」とされてしまうところがあります。「わがままはやめて」とだれかにいわれたら、どのような言動が「わがまま」とされているのか、それは「セルフィッシュ」なのか「アサーティブ」なのかを考えて、意味を分節化してみるといいかもしれません。