ベンチャー精神を発揮し
時代の先端を走る卒業生たち

フリーアナウンサーの徳光和夫氏フリーアナウンサーの徳光和夫氏 Photo:SANKEI

 東京・新宿区にある6年制中高一貫の男子校だ。明治以来の伝統を誇り、難関大に多くの合格者を出す進学校として、全国に鳴り響いている。

 難関大を卒業したものの、安定した大企業サラリーマンやキャリア官僚の道を選ばず、ベンチャー精神を発揮して時代の先端を走っている卒業生が、何人も出ている。

 ライフイベントのメディアを企画・運営するインターネットサービス企業のじげん(本社・東京都港区)という会社がある。東京証券取引所プライム市場に上場している。

 この会社の社長を務める平尾丈(じょう)は、海城中・高校から慶応大環境情報学部に進学、学生起業家として2社のIT系ベンチャーを立ち上げた。新卒でリクルートに入社し23歳で関連企業の役員になったものの、数年で独立し、現在ではじげんの社長となっている。従業員はすでに700人を超えており、雇用拡大にも貢献している。

 平尾より2年先輩の須藤憲司も早稲田大卒業後にリクルートに入社、関連企業の執行役員に就いたが、2013年にKaizen Platformを米国で創業した。17年には日本法人も設立した。同社は、顧客がデジタルマーケティングにおいて抱えている課題の解決や、継続的なUXの改善をワンストップで請け負うコンサル会社で、東証グロース市場に上場している。

 須藤よりさらに2年先輩の内藤裕紀は、海城高校を経て京都大経済学部に進学、ドリコムの創業社長だ。06年に27歳で同社を東証マザーズ(現東証グロース)市場に上場させた。ドリコムは、ゲーム、メディア、出版事業などを行うベンチャー企業だ。

 高橋飛翔は、デジタルマーケティング事業やスマホアプリ紹介サービスのナイルの創業社長で、23年12月に同社を東証グロース市場に上場させた。高橋は東京大法学部卒で、在学中から起業活動を実践してきた。

 岡井大輝は、電動キックボードのシェアリングサービスをするLuup(ループ)の創業社長だ。「自転車におけるiPhoneになろう」という意気込みで20年頃から事業に乗り出している。1993年生まれで、東大農学部卒だ。

 日本のIT(情報技術)教育の先頭を切り開いてきた人物に、杉山知之(54年生まれ)がいる。04年から05年にかけて日本初の株式会社立のデジタルハリウッド大学院大学(現デジタルハリウッド大学大学院)と大学を開学させた。デジタル技術を活用したコンテンツ制作の教育・研究などを行っている。

 杉山は海城高校から日本大学に進み工学博士号を取得した。自身は21年に、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症したことを公表したが、VRやメタバース技術を生かしながら、なお教育現場に携わっている。

 ウェブではなく、逆に「紙」にこだわってクリエーティブ能力を発揮している卒業生もいる。ブック・コーディネーターの内沼晋太郎(80年生まれ)だ。本屋でビールが飲めたり、本棚は北欧のビンテージ家具…といった新しいコンセプトの書店を企画・開発している。内沼は、一橋大商学部卒だ。

 89年に海城高校を卒業した田辺大は、「社会起業家」を名乗る。起業支援と事業再生支援を専門とし、とりわけソーシャルビジネスの支援に力を注いでいる。中央大卒業後、東京工業大大学院博士課程に進んだ。

 尾野寛明は、島根県などで地域再生に携わり、自治体と連携しながら古本の販売など具体的な事業を進めている。一橋大大学院博士課程修了だ。