「ビジネス教養としての孫正義」第7回Photo:JIJI(孫正義氏)/ Photo by Motoyuki Ishibashi(夏野 剛氏)

想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第7回。対談相手は、NTTドコモが提供し、爆発的に普及した「iモード」の生みの親として知られる夏野剛氏。しのぎを削ったライバル会社のトップである孫正義氏を「真の経営者」と賞賛し、「資本家なんて虚業だ」という批判にも異を唱える。インタビューは、孫正義氏の「iモード」批判を夏野氏が振り返るところから始まった。(取材・構成/梅澤 聡)

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iモード批判の真意を確かめに
ソフトバンク本社へ

井上 夏野社長は、1990年代の終わりにNTTドコモで「iモード」の立ち上げの中心メンバーとして活躍されました。今回は、孫社長と同時代に「日本における携帯電話の発展」に貢献された夏野さんにとって、孫正義という人物がどのような存在だったかについて、お話をうかがえればと思います。はじめに、夏野さんが孫さんと初めて出会ったのは、いつのことですか?

夏野 2000年ぐらいに孫さんが「iモードはインターネットじゃない」と言ったのを知りました。雑誌のインタビューか人づてかは忘れましたけど……。ちなみに2011年に、あるビジネス誌のインタビューで、孫さんが「iモードはインターネットじゃない」と発言していましたが、あれは新しく出てきたスマホのマーケティングを兼ねたパフォーマンスだと思っているので、これとは別の話ですし、まったく気にしていないです。

 僕はドコモでiモードに携わっていた当時から孫さんを尊敬していましたから、その発言を聞いて「らしくないな。どうしちゃったんだろう?」と思いました。そして、「そこまで言うのだったら、一度真剣に議論して、真意を確かめたい」と思い、当時のソフトバンク本社に直接会いに行ったんです。それが最初ですね。

井上 孫さんは、何か誤解していたんでしょうか?