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組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

実は全く違う“幸せな個人主義”と“不幸せな孤立主義”
日本の職場を甦らせる「真のコミュ力」を持つ社員

――処方箋⑲ 従順な社員より「協力できる個人主義社員」を目指せ

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第19回】 2013年4月10日
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成果主義の失敗と反動としての
「コミュ力主義」は現実的か

 安倍政権が志向する「アベノミクス」は、これまでのところ良い成果を出しており、久々に日本に活況が戻ってきそうな気配だ。これによって、いわゆる「失われた○○年」を取り戻す時期がやっとやってきた、という論調も見受けられる。

 マクロ経済は私の専門ではないので、アベノミクスの効果についての詳しい分析は専門家に任せたいが、1つ言えるのは、15年前と今では人々の「働き方」、あるいは「働くための価値観」は大きく違っている。そのため、仕事の進め方、効率性などについては、バブル期以前そのままのやり方ではうまくいかないだろう。そしてそのことは、ビジネスの現場にいる社員自身が肌で感じていることでもある。

 バブルがはじけ、企業業績が悪化した際、多くの企業が米国方式の「成果主義」を導入した。しかしながら、その評判は良いとは言えなかった。日本の組織文化にはそぐわないという考えのもと、いったん導入した成果主義を止めてしまった企業も多かった。

 確かに、成果主義を日本の組織に適用することは簡単ではない。そもそも権限の境界があいまいで、業務責任についても暗黙の了解で進めてきた組織だったため、プロジェクトが成功したり失敗したりするごとに、誰の責任かを事後的に議論しなければいけなくなったり、360度評価を導入しても、評価内容がバレることのデメリットの方が大きくてほとんど機能しなかったり、といったことが頻繁に起こっていた。

 その一方で、拙著『不機嫌な職場』や『フリーライダー』で述べたように、職場の人間関係は希薄になり、組織が疲弊した挙句、「タダ乗り」をする者がオイシイ思いをする状況ができ上がる。それがますます労働意欲を削ぎ、生産性を低下させる、といった問題も起こってきた。そんななか、企業は採用の際に「コミュ力」を重視するようになった。最近の就活生の話題も、もっぱら「コミュ力」だ。

 実は、こういった諸現象の根幹にあるのは同じ原因だ。それは「集団主義的なしがらみを嫌った孤立主義の蔓延」である。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

職場で「不快感」を訴える社員が急増している。成果主義的な評価制度を導入する企業が増えたことにより、チームワークよりも自分の業績を重視する社員が増え、「ギスギス職場」が生まれているからだ。一方で、年功序列と終身雇用が崩壊しつつある職場では、職場の「世代間ギャップ」もかつてなく広がっている。こうした職場は結束やコミュニケーションを失い、社員の不快感は増していく。職場の不快感を取り除くには、制度的な「仕組み」を導入するだけでは不十分だ。部下1人1の「心」に効く、メンタル・マネジメントの方法論を上司が体系的に理解しておく必要がある。この連載では、日本の職場で起こりがちな「不快感」の臨床例を毎回わかりやすく紹介し、それを解決するメンタル・マネジメントの方法論を、社会心理学的な視点を織り交ぜながら、詳しく解説していく。

「組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」」

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