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森信茂樹の目覚めよ!納税者

英キャメロン首相を激怒させたスタバ
国家vs.多国籍企業の租税戦争が始まる

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第47回】 2013年4月11日
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スターバックスが
火をつけた租税回避問題

 英国キャメロン首相は、スターバックス英国法人(以下、スタバ社)の英国政府に支払う法人税額が少ないことに驚いた。それは98年に事業を開始して以来、30億ポンド(1ポンド150円で4500億円)の売り上げがあったにもかかわらず、法人税の納税額はわずかに860万ポンド(12億9000万円)、利益を計上した年はわずか一年間、という驚くべき実態であった。

 一般大衆もこれには怒りをぶつけて、不買運動や「フェアな分担をすべきだ」とプラカードを掲げたデモ騒ぎにつながっている。

 このような中で、英国議会もこれを取り上げ、スタバ社や、同様な租税回避をしているアマゾン、グーグルの幹部を議会に呼んで追求をした。英国では、多国籍企業の租税回避が、大きな社会問題となっているのである。

 租税回避をもたらしている要因は、米国をはじめとする世界の一流多国籍企業の行う「タックス・プラニング」である。その仕組みは、決して複雑なものではない。

スタバが実行した
タックス・プランニングの中身

 スターバックス社のプラニングはこうである。

 まず、スターバックス英国法人は、ローストしたコーヒー豆をスイスの関連法人から仕入れている。その価格をいろいろな理由をつけて、市場価格より高く購入すれば、英国法人の利益は圧縮され、スイス法人にその分だけシフトすることになる。

 次に、英国法人は、オランダの関連法人に、スターバックスの使用する商標や特許、さらには接客マニアルなどのロイヤルティーを払っている。これは相場があるわけではないので、多めに払えば英国法人の所得は圧縮でき、オランダにシフトされることになる。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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