2月13日、バレンタインデー前日の金曜日――。中国上海市中心部のオフィスビルでは、花束を持って女性の帰りを待つ男性の姿があちこちで見かけられた。

 証券会社で働く20代の中国人の女性は、「普段は殺風景だが、この日ばかりはロマンティックなムードが漂っていた」という。

 中国のなかでも“恋愛先進地域”として知られる上海では、「バレンタインに男性が女性に花束などのプレゼントを贈るのが当たり前」という習慣がある。それが婚約ともなれば、婚前に男性が家を購入するのが前提条件。結婚後も、共働き家庭では家事や子育てに男性が積極的に参加するケースが圧倒的だという。

 ある日系金融機関で働く中国人(30代・男性)は、「仕事で重要な交渉をするとき、相手が中国系企業の場合はトップの多くが女性。子育てしながら重要ポストに就くことは当たり前」と言い切る。驚くことに、上海では今やこれほど“男女同権”が進んでいるのだ。

 そのような状況もあってか、実は最近、「働き続けながら結婚・出産するなら、相手は上海人」という日本のワーキングウーマンが、目立って増え始めたという。

 実際に、中国人と結婚した日本人女性の感想はどうなのだろうか? 

  「洗濯以外の家事は99%、夫がやっている」と言うのは、6年前に上海人と結婚した山崎こずえさん(37歳)だ。

 こずえさんは一橋大学を卒業後、大手金融機関に総合職として入社した。社内では「女性社員は年間150時間以上の残業をつけてはいけない」と言われ、サービス残業を強いられた。一方で男性社員は月2~3万円は給与が多かったため、大きな疑問を抱いたという。

 そんな状況の中で、こずえさんは「結婚や妊娠をすれば退職を余儀なくされるのでは」と感じ始めた。そこで、「出産後に再就職するにはスキルが必要だ」と考え、28歳で会社を退職。中国に留学して、上海の語学学校で中国人向けの日本語教師をしながら、勉強を続けた。

 語学学校では、こずえさんの教室は常に超満員。そのなかに、彼女にアプローチをかける現地の学生は少なくなかった。ある20代半ばの男性は、自宅に遊びに行く口実に「掃除してあげようか」と切り出した。自宅に招くと彼は本当に掃除を始め、3時間ものあいだ掃除を続けた。こずえさんにとって、これは「とても衝撃的だった」という。