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田中均の「世界を見る眼」

TPP問題の3つの本質
日米事前協議の合意を機に本質を理解しよう

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第19回】 2013年4月17日
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TPPの日米事前協議合意を機に
問題の本質を理解することが重要

 TPPを巡る日米の事前協議が終了し、日米合意が発表された。ようやく1つのステップが進んだが、今後のプロセスも多難である。

 今回の合意についても、日米の経済交渉ではよくあることではあるが、同一の合意文書についての日本側と米側の説明ではニュアンスが大きく異なっていたことからも、将来の困難さは容易に推測できる。

 日米の合意の基本は(1)米政府として日本のTPP交渉参加を支持すること、(2)日本は包括的で高い水準の協定達成に取り組むこと、(3)自動車については米国の関税はTPPの最も長い関税撤廃期間(10年)によること、(4)自動車貿易及び非関税障壁についてTPPと並行した二国間協議を行うこと、(5)かんぽ生命の新規業務を日本政府は当面認可しないこと、(6)日本の一定の農産品、米国の一定の工業製品といったセンシティビティを認識すること、であると考えられる。

 日本の説明では、農産品のセンシティビティが認識されていることに焦点があてられているが、米側の説明ではこのような点については触れず、むしろ、日本は高い水準のTPP達成にコミットしたという点がハイライトされている。そして、自動車、保険、非関税障壁の分野で大きな進展があったという説明がされている。

 もちろん、日本が遅れてTPPへの参入を要請しているわけであり、一定の譲歩はやむを得ないことであろう。また、米側は議会との関係が残っており、議会対策を意識した説明となっている。

 TPP交渉は、日本に関してはまだ出発点に立ったばかりであり、今回の合意そのもの、あるいはその説明ぶりをとらえて議論する意味はあまりない。それよりも、TPP問題の本質を理解することが何より重要であると思う。

 第一に、TPPの戦略的重要性である。米国にとっては、ホワイトハウスのフローマン大統領補佐官(国家安全保障担当副補佐官)が今回の合意を説明する際に冒頭述べたように、TPPは経済面での米国のアジアへの回帰(PIVOT)ないしリバランシングというオバマ大統領のアジア重視政策を体現する戦略的重要性を持っている。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


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西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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