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「超」入門 学問のすすめ――明治維新と現代日本に共通する23のサバイバル戦略
【第8回】 2013年5月7日
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鈴木博毅

幕末志士にはどれほどの危機感があったのか?
今、日本人が忘れかけている「挑戦者の気概」

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幕末明治期、西洋列強の属国となる恐れを抱え、国家存亡の危機に立ち向かった日本人。敗戦後、焼け野原から立ち上がり世界に挑んだ日本人。危機を叫ばれながら、なかなか危機感を持てない今こそ、「真の挑戦者」になるための意識改革が必要である。我々はどれほどの気概と挑戦スピリットを持つべきかを歴史から学ぶ。

挑戦者になると、
やたらと強い日本人の文化的習性

 薩摩藩の武士であった西郷隆盛は、開明的な藩主である島津斉彬に抜擢された人物の一人ですが、ペリーの黒船が来航して以来、段階的に藩の軍備を西洋式に転換していきます。

 ところが西洋式の軍隊訓練を行わせても、なぜか武士たちには緊張感がありません。その理由は、当時薩摩に広まっていた示現流剣法という優れた剣術があり、この剣術を極めることさえできれば、西洋の軍隊に十分対抗できると多くの武士が考えていたからです。

 もちろん、すでに大砲と鉄砲の時代でしたから、日本国内でも火器による戦闘が主流となっていましたが、軍備を含めた技術進歩については強い意識がなかったようです。西洋式軍備に目を開くのは、1863年の薩英戦争でイギリス海軍と戦闘を行い、薩摩側が多大な損失を蒙ったことがきっかけです。

 グローバル化により、国内戦争ではなく西洋列強と接するようになり、相手側の進んだ科学技術や軍備について認知がされていても、当時の武士の多くは太平の世に慣れきっており、昨日と同じ明日が続くかのような錯覚におちいっていたのでしょう。

 歴史を振り返るとき、日本人と日本は「挑戦者」になるべきとき、その新たな姿勢を身に付けるのがやや遅いのではないかと感じます。

 サムライである武士は国内では藩に身分を保証された立場で、300年の江戸幕府が統治している中では庶民に優越する立場ではありました。しかし、その立場はあくまで国内だけであり、西洋列強のようにまったく異なる技術体系で進化した側との接触では無意味です。

 幕末の志士が西洋列強の技術を貪欲に学び、西洋式軍備を推し進め、奇兵隊のような庶民を含む能力主義を採用したのは、彼らが広い視点で「挑戦者」という自己認識をすばやく持ったからではないでしょうか。環境を含めた大変革があったとき、過去の延長で慢心したまま古い王者の感覚でいるのか、意識をゼロにリセットして「挑戦者の気概」により新たな学びに謙虚にぶつかっていくか。

 福沢諭吉や幕末の志士は、日本が列強とのグローバル化の波にさらされたとき、自分たちと日本という国が「挑戦者」の立場となったと、誰よりも早く気づいたのです。

 旧日本軍も同様に、西洋列強に追いつくため知識や技術を謙虚に追いかけて蓄積した時期と、緒戦の結果で「世界最強」などの看板を掲げて自らの能力と外形に酔い始めた時期に分かれており、最終的な結果は歴史が示す通りとなりました。

 敗戦後の日本では、国内が焼け野原の風景から日本人は世界に挑戦し、あらゆる技術を貪欲に試し、学び、世界に売り込んでいきました。

 日本人と日本企業が「挑戦者」であったことを感覚でわからない方は、ソニー創業者である盛田昭夫氏の著作『MADE IN JAPAN わが体験的国際戦略』を読むことをお勧めします。戦後、日本は100%純粋な「挑戦者」の立場となり、私たちの上の世代がどのように謙虚に学びながら、未知の世界に飛び出し、「挑戦者」として歩んでいたかよくわかります。

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鈴木博毅 

1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。ビジネス戦略、組織論、マーケティングコンサルタント。MPS Consulting代表。貿易商社にてカナダ・豪州の資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略書や戦争史、企業史を分析し、ビジネスに活用できる新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。顧問先には顧客満足度ランキングでなみいる大企業を抑えて1位を獲得した企業や、特定業界で国内シェアNo.1の企業など成功事例多数。日本的組織論の名著『失敗の本質』をわかりやすく現代ビジネスマン向けにエッセンス化した『「超」入門 失敗の本質』(ダイヤモンド社)は14万部を超えるベストセラーとなる。その他の著作に、『企業変革入門』『シャアに学ぶ逆境に克つ仕事術』(日本実業出版社)、『戦略の教室』(ダイヤモンド社)、『「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法』(マガジンハウス)、『実践版 孫子の兵法』(プレジデント社)、『この方法で生きのびよ』(経済界)、『君主論』(KADOKAWA)などがある。

 


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