購買行動を可視化しデザインする時代

青木雅人
博報堂 買物研究所所長

1989年博報堂入社。自動車・コンビニエンスストア・製薬・飲料など幅広い業種のメーカーのマーケティング戦略/事業戦略立案、ブランディング、商品開発を担当。2005年よりマーケティングセンターチームリーダーを経て12年より現職。ショッパーマーケティング領域のソリューション開発、コンサルテーション業務を推進。

 続いて、青木雅人・博報堂買物研究所所長は「いかに買物客をとらえるか」というテーマでスピーチを展開。その背景には、買物客が見えにくくなったとの現状認識がある。

「単身世帯の増加などを受けて、夫婦と子供で構成される“標準”世帯は減少しています。世帯の構造が変わり、同時に販売チャネルのコアターゲットも変化しています」と指摘する。例えば、かつてコンビニエンスストアのメインターゲットは若者層だったが、現在では高齢者も含めたすべての世代がターゲットになっている。

 また、商圏の多様化・複雑化も進んだ結果、「同じ駅であっても西口と東口では、商圏がまったく異なることがあります。全店一律の品揃えでは対応できなくなりました」。

 加えて、店頭マーケティングの限界も見えてきたという。以前はマス広告とチラシから店頭に至る流れを管理していれば事足りたが、現在の消費者はインターネット広告やEC、ソーシャルメディアなどにも日常的に接している。

「ますます複雑化する買物行動を、いかに統合的にとらえるか。それは極めて重要な視点です」

 そんな新時代のマーケティングに求められる視点は3つあるという。

 第1に仮説とデータ検証を行き来する高速PDCA、第2に来店前と来店後を統合し購買行動をデザインするマーケティング、第3に各店舗の多様な特性に対応するマーケティングである。

「これら3つの視点において、ビッグデータは重要な役割を担うことができます」

 例えば、来店前から店内までの顧客行動の把握。現在では、スマートフォンの位置情報を用いて、顧客がどの店とどの店を比較しているかをある程度つかめるようになった。店内で棚の前を通過した人数や商品を手にした人の数も、各種センサーで知ることができる。あるいは、ID-POSデータなどを活用して、店内外、リアルとネットという2軸での顧客行動の統合を目指す動きもある。ビッグデータによって、マーケティングの進化はさらに加速しつつあるようだ。