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2030年のビジネスモデル

100年の時間軸を持った金融とは?――鎌倉投信が育む「希望の金融」

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第5回】 2013年4月25日
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収益性とは違う軸を併せ持った金融

 「金融資本は、短期的な株価の値上がりを目的とした企業や人を増幅させています。派生型の金融商品が欲望の受け皿となって、この風潮は止まらない。人々の欲望を抑えることは困難で、このままではお金は自己増殖し、金融市場の動きに連動した経済の浮き沈みはますます激しくなっていくのではないか」

 鎌倉投信の鎌田恭幸代表取締役社長は2008年1月に大手外資系の資産運用会社を辞めるまでの20年間、自分の職業の意義について自問自答していた。

 「フローベースの短期志向の投機は本来的な価値を生まない。目に見えないものをきちんと見ていかないと、企業の本当の価値はわからない。財務諸表では見えない価値が企業の本当の価値。本当に価値あるものに根差した投資の在り方、信頼に根差したお金の循環が必要だ」

 鎌田さんは以前勤めていた大手外資系の運用会社を辞めた当初は、もう金融の世界に再び足を踏み入れることはないと思っていたという。ではなぜまた金融の世界に関わったのか。

 この質問に対し「日本には世界に誇れるようないい会社が沢山ある。そういういい会社の発展成長を永く応援する投資の在り方を目指したい。金融が健全に機能しないと社会は良くならない」「お金を通じて伝える力というものが確かにある。お金に色はないが、使う人の色に染まる」と、鎌田さんは答えた。つまり使う人の意思や心がお金に特別な意味を与え、人や社会をその意味に沿った方向へと動かす原動力になるということだ。

 「金融を通じて社会にどういう価値をもたらすかが大切だ」「金融を通じて社会に希望と勇気を与える力になりたい」、鎌田さんは、かつての同僚に声をかけ、自ら培った経験を支えに、これまでとは違う独自の軸を併せ持った投資信託委託会社を作る覚悟を決めた。

 「投資とは短期的なさや取りではなく、次の世代に富や価値をつなげていく役割を持つ。今、日本は様々な社会的課題を抱えている。規模に関係なく、本業を通じて社会的課題を解決しようとする企業群こそがこれからの日本にほんとうに必要とされる。そういう企業と鎌倉投信、さらには受益者(投資家)との『顔の見える関係性』の中で、企業を長期間にわたって応援していく金融が必要だ」

 鎌田さんは、2008年8月、独立系・直販型の投資信託を設定運用、販売する鎌倉投信を設立した。次の世紀に価値をつなぐことを目的とする新しい軸を持った金融が小さいながらも誕生した。

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


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未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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