「個人に焦点を当てれば、日本はまだまだ経済発展できる」
インターネットが社会のインフラとなり、ネットワーク上でやり取りできる仕事の種類が増えている。例えばパワーポイントの作成、ライティング、翻訳、ミニリサーチ、デザインやロゴマークの開発、ウェブ制作、アプリケーション開発などだ。これらの仕事の遂行は非対面でも可能であり、働く場所も自由になった。これと並行して、従来の正規社員や派遣社員という枠組みに縛られないフリーランス・ワーカーや「多足のわらじ」のように、兼業・プロジェクト型で仕事をする人たちも拡大している。
これら2つの流れ――インターネットベースの仕事の種類の増大とプロジェクトベースで仕事をするワーカーの拡大――が結びつくことによって、組織への雇用をベースとした従来の仕事や働き方とは違う、個人をベースとした新しい仕事や働き方の形が今、広がりを見せ始めている。
「個人に焦点を当てれば、日本はまだまだ経済発展できる可能性がある」とクラウドワークスの吉田浩一郎社長兼CEOは言う。
「組織に雇用される正社員は今やWindowsと同じような固定的なフォーマットになってきている。プライベートではFacebookやTwitterなどでインターネットによってオンラインの情報共有が進んでいるにも関わらず、労働環境はあらかじめ決められた構造の中で、時間や場所が制限され個の可能性を引き出し切れていない場合がある。労務コンプライアンスの厳格化の中で、かえって働きにくいと感じている社員も多い。
インターネット時代に対応して個人の働き方のフォーマットが変わり始めている。そして中小企業は先が読めない経済状況の中で、実際のところ正社員の採用は敷居が高いと感じるところも増えている。もちろん正社員のメリットは明確に存在するので、正社員という制度に加えて、時間や場所にとらわれない言うなればLinux型の働き方も必要だ」と吉田さんは言う。
増大するインターネットベースの多様な仕事を対象に、仕事を発注したい企業(クライアント)と受注したい個人(登録ワーカー)とがウェブ上で自由に結びつく。人と仕事のマッチングのみならず、仕事の遂行、契約、決済までを一気に完結させることができる新たなワーキング・プラットフォーム――吉田さん率いるクラウドワークスは2012年3月にサイトを公開、わずか1年でクライアント数は6000社を突破、登録ワーカー数も2万3000人を超え、急速にその支持を獲得し始めている。20世紀の人材派遣のプラットフォームはリクルートだった。今、急速に成長しているのはリブセンスの成功報酬型。さらにこの先の未来はどうなるのだろうか。
インターネット時代のワーキング・プラットフォーム
クラウドワークスのしくみは次のようなものだ。仕事の受注を希望する個人(登録ワーカー)は、自身の「スキル」と「空き時間(仕事することが可能な時間)」を同社のウェブサイトに登録する。ウェブサイトには登録ワーカーの過去の受注実績やその仕事ぶりに対する顧客の満足度などの情報も掲載されている。