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幸福大国デンマークのデザイン思考
【第4回】 2013年4月30日
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大本 綾

デンマーク人はなぜ、
家具のセンスが良いのか?

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北欧といえば「家具」を思い浮かべる人も少なくない。彼らはどのように家具を選び、使うのか。また、どのような考えのもと、北欧の家具は作られているのか。デンマークに留学中の大本綾さんが、一般家庭の家具選びから、家具デザイナーまで取材を行った。大好評の「留学ルポ」連載第4回は、北欧の家具から見える、居心地の良い生活空間づくりと、ものづくりの原点を探る。

椅子好きの夫婦

 去年の8月、デンマークに来てから住む場所が決まるまで、デンマーク人夫婦の家にホームステイをさせてもらっていました。滞在させてもらったのはクヌッドさんとグリートさんのお宅です。そのとき初めに驚いたのが、家にある椅子の多さです。

 図書館に勤務するクヌッドとグリートには4人の子どもたちがいますが、仕事や学業で子どもたちは皆実家を離れてコペンハーゲンに住んでいます。次女の部屋を借りていたのですが、6畳の部屋に椅子が6脚もありました。デスクの前に1脚。ベッドの側に1脚、それから窓際の小さな木製のテーブルを挟んで置かれた2脚の椅子。さらに部屋の端にあるカウンターに2脚。

 ダイニングにも椅子が8脚あります。合計で何脚あるの?と聞くと、なんと30脚と言います。オークションで購入したものが多いそうですが、両親や祖父母の家具を引き継ぐ文化がデンマークにはあるので、世代に渡り受け継がれたものも含まれています。

 椅子好きな家庭だけあり、その種類もさまざまです。ダイニングの椅子はクヌッドとグリートの祖父から受け継いだ1900年代の椅子が2脚、アルネ・ヤコブセン、ナナ・ディッツェルのデザインした椅子がそれぞれ2脚ずつあります。同じ部屋にまったく異なるスタイルの椅子が共存しているのです。

 日本の一般家庭のダイニングテーブルの周りの椅子は大抵種類が揃っています。なぜさまざまな種類の椅子がたくさんあるのか、不思議に思いました。グリートに聞くと、「人がみなそれぞれ違うように、座る椅子も違うべき。背の高さも違うし、そのときの気分だって違うでしょ。私もその日の体の調子で背もたれが緩やかで手すりがついている椅子を座ったりするわ」と言います。

 選ぶ家具は、デンマーク人の生きざまを表しているのではないか、とグリートの言葉を聞いて考えました。共通の友人がいるという理由だけで日本から来た私を温かく迎えてくれ、結局3カ月間も滞在させてくれた寛大なクヌッドとグリート。彼らの変化を受け入れる寛大さが、種類のある椅子の理由を証明しているようでした。

 連載記事が決まり、書きたいテーマについて考えたときに真っ先に家具のことが思い浮かびました。デンマーク家具のデザインや機能性について書かれた文献は多くありますが、デンマーク人の家具の趣向についての本は読んだことがなかったからです。デンマーク人と家具の関係について知りたい、という好奇心から調査を始めました。

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大本 綾 [おおもと・あや]

1985年生まれ。立命館大学産業社会学部を卒業後、WPPグループの広告会社であるグレイワールドワイドに入社。大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わる。プライベートでは、TEDxTokyo yz、TEDxTokyoのイベント企画、運営に携わる。2012年4月にビル&メリンダ・ゲイツ財団とのパートナーシップによりベルリンで開催されたTEDxChangeのサテライトイベント、TEDxTokyoChangeではプロジェクトリーダーを務めた。デンマークのビジネスデザインスクール、The KaosPilotsに初の日本人留学生として受け入れられ、2012年8月から留学中。


幸福大国デンマークのデザイン思考

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世界で最も刺激的なビジネススクールとして注目されるデンマークの「The Kaospilots」に、初の日本人留学生として受け入れられた大本綾さん。彼女が世界のデザインスクール最前線での学びをリアルタイムで書き記す「留学ルポ」連載。日本ではまだ馴染みの薄いデザイン思考だが、近年、欧米ではビジネスや社会に変革を起こす発想法として、俄然注目を集めている。
また、デンマークは幸福大国として知られているが、その実態はあまり日本人には馴染みがない。彼らの価値観から教育、公共デザイン、ライフスタイル、社会福祉、家具、ファッション、広告、食事、子育てまで、現地で取材しながらレポートしていく。月1回掲載予定。

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