麹町経済研究所のちょっと気の弱いヒラ研究員「末席(ませき)」が、上司や所長に叱咤激励されながらも、経済の現状や経済学について解き明かしていく連載小説。前回から3回にわたり、特別編として、“いまさら聞けない”アベノミクスについて、末席が精魂こめて解説します。今回は、アベノミクス3本の矢の最後、成長政策について。(佐々木一寿)
※「日本では新奇的に扱われる『アベノミクス』は、じつは『世界標準ノミクス』だった!?(1)金融緩和編」を読む。
※「日本では新奇的に扱われる『アベノミクス』は、じつは『世界標準ノミクス』だった!?(2)財政政策編」を読む。
週刊ヨミヨミこども新聞の記者は、「アベノミクス」の3本の矢、「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略」の解説を求めて取材を続けているが、締め切りが近づいているのか、だんだん早口になってきている。
「じゃあ、2本目の矢で上手く行けば、3本目は必要ないんですかね?」
末席はモジモジしている。記者はそれにじれったさを感じつつ、コメントを待つ。
「それで上手く行けば、そうかもしれないですね。ただ、やはり備えるということは重要だと思います」
うーん、なんかさっきまでの威勢の良さとは打って変わって、コメントの歯切れが悪くなっている気がする。記者は急かすように質問する。
「はっきり言っていただかないと、こどもたちには伝わらないですよ! やるべきですか、どうですか?」
末席は一気に追い詰められる。やはり今回、ハードル高いな。そう心で嘆きながらも、一生懸命に説明を試みる。
「じつは、3本目の矢に関してどうしたほうがいいのか、経済学的には処方箋があんまり確立していないんですよ*1」
*1 『クルーグマン教授の経済入門』(ポール・クルーグマン著)などを参照
記者は驚いたまま、続きを待っている。
「(1)の金融政策に関して言えば、まあ9割以上の経済学者はやるべきでしょうね、という感じだと思います。(2)の財政政策に関して言えば、平時なら半々くらい、ピンチの時なら7~8割方の経済学者がやったほうがいいと言う感じでしょうか。ただ、(3)成長戦略に関しては、それよりも支持率が落ちるのかな、と思いますね、ザックリとですが。ただ、備えるということは重要ですが」