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労働市場最前線Ⅱ

採用後倒しは勉強時間増えず就職率悪化の可能性
両者を改善させるために企業と学生に送る5つの提案

大久保幸夫
【第13回】 2013年5月23日
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 今年の4月19日、政府は「勉強時間を担保するため、できるだけ就職活動を遅くすることが望ましい」として、経団連、経済同友会、日本商工会議所のトップを首相官邸に招き、採用活動開始時期の繰り下げを要請した。3団体はともに受け入れの方針を示し、これにより、2016年春に入社する学生たちから、広報活動は現行3年生の12月開始から3月へ、選考は現行の4年生の4月から8月開始に変更となった。

 学業を阻害しないように採用活動を後倒しすることは、長らく大学側の希望でもあったわけだが、果たしてこのようなルール変更は、期待通りの成果を上げることができるのだろうか?

本当に3月・8月ルールは守られるのか?

 まずひとつの疑問が浮かぶ。それは本当に採用時期の変更がきれいにできるのか、ということだ。

 今回政府は経済3団体に要請を行い、各団体は受け入れの方針を示したが、実はこれをもって新卒採用を行うすべての企業が後倒しに従うことになるわけではない。

 日本経団連は就職活動のルールを倫理憲章として定めているが、倫理憲章にサインしている企業は経団連加盟企業1300社中、830社程度である。また、経済団体が約束したことは周知することであって、守らせることではない。新経連は周知も行わない方針のようであるし、そもそも新卒者を採用している会社の総数は日本全体で約10万社に及ぶのだ。

 経団連の倫理憲章が新卒採用市場全体に影響を与えていることは事実だが、倫理憲章の前身である就職協定には「青田買い」と呼ばれる破られ続けた歴史がある。そのために一旦廃止されて現在に至っているので、簡単に右から左へと変われるわけではないことをまず理解しておく必要がある。

 もし、守られずに4月に選考する会社や8月に選考する会社などに分散すれば、学生たちはまず4月に照準を合わせて就活を行い、内定を1つでも得て、その上で8月の選考集中時期に臨もうとするだろう。

 そうなれば就活は全く後倒しにはならずに長期化するだけで終わる。これでは改善ではなく改悪になるだけだ。長期化すれば、今度は卒業論文や卒業研究にも悪影響が出てくる。その危険性を大いに孕んでいるのである。

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1961年生まれ。1983年一橋大学経済学部卒業。同年株式会社リクルート入社。1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年~2012年内閣府参与を兼任(菅内閣・野田内閣)。2011年よりリクルートホールディングス専門役員就任。2012年人材サービス産業協議会理事就任。専門は、人材マネジメント、労働政策、キャリア論。


労働市場最前線Ⅱ

2011年1月からスタートし2012年7月まで続いた『ワークス研究所の労働市場「最前線」』の第2弾。新卒就職、非正規社員、シニア世代の再就業、労働法制……、日本労働市場には多くの課題があり、それは業種や規模の大小を問わず、すべての企業に関係する事だ。本連載ではリクルートワークス研究所の研究員のみならず、リクルートグループ内で「労働」に深く関わる識者からの、最新の労働市場分析や提言をお届けする。

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