長期国債を大量に購入することの意味

前回(第10回)まで、足下で起きている長期金利(国債利回り)の変動について詳しく検討してきた。言うまでもないが、こうした長期金利の変動のきっかけをつくったのは、黒田東彦日銀新総裁のもとでの大胆な金融緩和策である。

 前総裁の白川方明氏のもとで今年のはじめにまとめられた金融緩和策も含め、安倍政権成立後の日銀の金融政策は、これまでの政策とは「次元の違うもの」であった。2%のインフレーション・ターゲットを明確に打ち出し、量的緩和のペースをさらに引き上げ、そしてこれまでの日銀が封印していた長期国債の大胆な購入を決定したのだ。

 長期金利の変化との関連で特に注目すべきなのが、長期国債の購入である。なぜこれまでの日銀はそれをためらってきたのか、そしてなぜ黒田日銀は長期国債の購入に踏み込んだのか。この点については、すでに本連載の第3回で詳しく述べた。

 これまでの日本銀行が長期国債を購入しなかったのは、出口戦略を強く意識していたからだ。大胆な金融緩和策が成功すれば、物価も資産価格も上昇するだろう。その時点で、過度に膨れ上がったマネーサプライを縮小する必要が生じる。

 しかし、日本銀行が長期国債を大量に手元に持っていると、それを簡単に売却することはできない。それで国債の金利が急騰するようなことがあれば、財政運営にも大きな支障が出るからだ。

 金融緩和でも、短期国債の購入を通じた量的緩和であれば、必要に応じて国債を売却してマネーサプライを縮小しやすい。それでなくても、短期国債であれば、比較的早い段階で償還になるので、いつまでも日本銀行のバランスシートには残らないのだ。