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美人のもと

西村ヤスロウ [広告プランナー]
【第51回】 2010年3月18日
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 美人の食事は適度に速い。別に急いで食べているわけでもないし、よく噛んでいないわけでもない。むしろしっかり噛んでいる。ただ食べ物にしっかり向かい合っているだけだ。

 特に時間に制限のある昼食や混んでいる店での食事では、流れに合わせている。とっくに冷めてしまったスープを放置していたり、しゃべることだけに夢中になり、全然食事を進めなかったりすることはない。そういうペースが悪い人は、箸やフォークやナイフをなかなか持たないかと思えば、持つ時間は長い。持ちっぱなしである。箸を指揮棒のように振り回したり、ナイフで空に字を書いたりする。そして噛みながら話す。時々噛んでいるものが見える。しかし、本人は何を噛んでいるかをすでに忘れている。

 美人は食べ物を「口に入れるまで」「入れてから」「話を始める」「話を聞く」といった行動のペース配分がとてもうまいのだと思う。一つ一つを大切にする。これが適度な速度を生む。

 一方、美人がお菓子を食べる時は適度に遅い。これもすごく遅いわけではなく、やや遅いという感じだ。アイスクリームが溶けてしまうほど遅いわけではない。この微妙な遅さが「美人のもと」を生むようだ。

 ほとんどのお菓子は空腹を満たすためというより、少しずつ楽しむようにできている。一口の量が小さい。小さくなるようにつくられていることが多い。「少しずつ」がおいしくなるようにできている。そして美人は口に運ぶ間隔がほどよく長い。ガツガツしない。さりげなく口に運ぶ。それはまるで食べたものの余韻を楽しんでいるようだ。

 食事速度が遅めの人はお菓子になると速くなる場合が多い。勢いよくお菓子に向き合う。さりげなさなどない。豆と向き合う鳩になる。音を立てながら、口を尖らせる。目が丸くなる。そしてやはり噛みながらしゃべる。ポッポッポだ。その変化の大きさに驚かされる。そんなに必死にならなくても誰も横取りしないぞ。

 美人は間隔を楽しんでいるので、お菓子が手元に残る。その残りをさりげなく鳩にあげるのだ。あげる笑顔がまた美しい。

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西村ヤスロウ [広告プランナー]

1962年生まれ。プランナー。趣味は人間観察。著書に『Are You Yellow Monkey?』『しぐさの解読 彼女はなぜフグになるのか』などがある。


美人のもと

『経』に好評連載中の西村ヤスロウ氏によるエッセイ。「美人のもと」とは、女性なら誰しも持っているもの、「美人のもと」を磨き続けるためのコツを解き明かす。

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