ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
出口治明の提言:日本の優先順位

アベノミクス成長戦略の三本柱と、
それが「達成すべき指標」は整合しているか?

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第87回】 2013年6月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 安倍首相は6月5日、成長戦略スピーチを行い、「成長戦略の三本柱がそろい、その目指すところについて、今回の成長戦略では、『KPI』すなわち『達成すべき指標』を、年限も定めて、明確にした」と主張した。ところが、市場の反応は冷淡で、日経平均株価は大幅に反落した。日経新聞によると、成長戦略第3弾の内容が「事前報道の範囲内にとどまり、新味にかける」との見方から売りが膨らんだ、という。そこで首相スピーチを全文読んでみることにした。

三本柱に対してKPIが5項目
内容的にも整合していない

 首相は、「女性の活躍」、「世界で勝つ」、そして「民間活力の爆発」を成長戦略の三本柱として取り上げた。私見では全く異論はない。方向感覚としては正しいと考える。

 次に首相はKPIとして、まず次の5項目をあげた。

 ・3年間で、民間投資70兆円を回復する
 ・2020年に、インフラ輸出を、30兆円に拡大
 ・2020年に、外国企業の対日直接投資残高を、2倍の35兆円に拡大
 ・2020年に、農林水産物・食品の輸出額を1兆円に
 ・10年間で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクイン

 そして、最も重要なKPIとして一人当たりの国民総所得を取り上げ、10年後に現在の水準から150万円以上増やしたいと結んだ。この結びについては全く異論はない。そして、上記5項目のKPIも、それぞれに見れば決しておかしいものではない。例えば、農業分野の輸出額1兆円については、2年前に当コラムでも言及したところである。

 一読して奇異に感じたのは、三本柱とKPIが整合していないという点である。民間企業であれば、経営戦略の三本柱を定めたのであれば、KPIもその三本柱ごとに定めるのが普通の感覚ではないか。これが、おそらく市場が冷淡だった本当の原因ではないか。古今東西、政策は整合的であることこそが、命なのである。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

⇒バックナンバー一覧