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田中秀征 政権ウォッチ

アベノミクスに誤算!?
「想定外」の事態が次々起こる理由

田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
【第186回】 2013年6月6日
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景気回復と株価上昇、
スピードに大きな違い

 株式市場の乱高下が止まらない。3歩後退、2歩前進の繰り返しになっている。為替相場もそれと歩調を合わせて円高に向かいつつあるようにも見える。

 猛スピードで走る車が突然、猫を見て急ブレーキをかけた。私はそんな印象を受けている。要するに、投資家の過剰反応ではないかと思うのだ。

 株価急落の要因はさまざまだが、やはり、運転手の目に入った猫は、「米金融緩和の出口が近い」という観測によるものだろう。

 そもそも雇用指標の改善や金融の引き締めは、経済が好転した何よりの証だ。中・長期的に見れば株価の上昇基調を裏付けるもの。しかし、好転すれば株価が急落するという現状はいかにも変則的だ。それだけ投資家は中・長期の米国や日本経済の動向に疑心暗鬼になっているのだろう。

 しかし、最近の経済指標によると、米国や日本の実体経済は明らかに持ち直している。ただ、景気回復のスピードと株価上昇のスピードが違い過ぎるのだ。言わば景気が自転車で前進しているのに対し、株価は自動車で前進しているようなもの。しかも5月23日の暴落までその自動車は全速力で走ってきた。

 6月5日現在、日経平均株価は、5月23日から2300円下落している。問題は株を売った金、株式市場から引き揚げた金はどこに向かったのか。どこに滞留しているのかということだ。

 長期金利が多少低下しているからか確かに国債が買われていることも分かる。だがこれは際立った現象とはなっていない。すなわち、投資資金が株から国債にシフトしたと言うほどではない。

 また、原油などの商品市場に駆け込んだかというと、そこでも商品価格の暴騰というような異変は起きていない。それどころか商品価格もむしろ下落しているようだ。

 そうすると、株を売った金は、相当部分がまだ投資家の手元にある可能性が高い。投資家が株式市場に背を向けたのではなく、手元の金を握りしめ、次の機会を慎重にねらっていることになる。

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田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

1940年長野県生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒業。
83年、衆議院議員初当選。93年6月、新党さきがけ結成、代表代行。
細川政権発足時、首相特別補佐。第一次橋本内閣、経済企画庁長官。
現在、福山大学客員教授、「民権塾」塾長。


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かつて首相特別補佐として細川政権を支えた田中秀征が、期待と不安に溢れた現政権の動向を鋭く斬り込む週刊コラム。刻一刻と動く政局をウォッチしていく。

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