本当に投資家の役に立つのか?
広告連動型「投資教育特集」の背景

 6月は多くの日本企業でボーナスが支給される月だ。加えて今年は、年初来の株価上昇がもたらした投資への関心に加えて、「NISA」(ニーサ)という通称の少額投資非課税制度が来年から始まることを見据えた口座獲得競争があり、金融機関のリテール向け(個人客向け)の営業努力には、例年以上の力が入っている。

 NISAは年間100万円が投資できる額の上限であり、その専用口座の中で運用商品のスイッチングができない仕組みでもあり、金融機関にとっての収益性には疑問もあるのだが、初年に口座を開いた金融機関に顧客が翌年以降も口座を開く可能性が大きいと見られていて、口座獲得競争が過熱している。

 口座開設の手続きは今年の10月からであり、まだ多くの金融機関がNISA口座に対応する運用商品を発表していないこともあり、「NISA口座を今決めるのは賢くない!」と声を大にして言いたいところなのだが、金融機関の「戦い」はもう始まっている。

 こうした状況を背景に、あちこちのメディアで行われているのが、広告と連動した投資教育セミナー及びその内容をまとめた記事の作成だ。

 たとえば、どこかの会場に一般投資家を二、三百人集めて資産運用をテーマにした講演会を開く。そしてこの内容を、新聞なら1面全面か2面見開き、雑誌なら2~4ページくらいの記事にまとめる。内容は、講師の話をまとめる傍ら、同じページに主に金融機関から広告が入る体裁になるのが普通だ。

 こうした記事は役に立つのだろうか。あるいは、内容を信頼してもいいのだろうか。

 今回は、先般ある媒体で、筆者がこの種の講演と記事に参画した経験について正直に書いてみたい(特定の媒体を批判する意図はないので、読者には媒体を詮索しないでいただけると嬉しい)。