米調査会社ガートナーの予測では、2017年にCMO(最高マーケティング責任者)のIT予算がCIO(最高情報責任者)のそれを上回るとしており、米IBMのバージニア・ロメッティ会長兼CEOはこうした変化を、第3世代のコンピューティングの到来と位置付ける。オフィスに計算機が導入された第一世代、業務の効率化に活用された第2世代に続き、第3世代ではビジネスの成長やビジネスそのものの革新にコンピューティングが重要な役割を占めるようになる。

 端的な例が、マーケティングの領域だ。消費者の購買行動は、ソーシャル、モバイル、ウェブといった多様な情報源の影響を受けて変わってきている。従来のような企業が発信するメッセージは消費者に届きにくくなってきた。それどころか、消費者にとって適切なタイミングで発信されないメッセージは、むしろその企業に対しマイナスな反応をも引き起こしている。企業と消費者の力関係は逆転し、ビジネスは「チーフ・エグゼクティブ・カスタマー」を中心に動かす時代になったと言われる。

 マーケティング活動、さらには企業のビジネスモデルそのものを社会の変化に合わせて変えていく。そうした企業のために、IBMはグローバルレベルの活動として「スマーター・コマース」を提唱し、顧客を中心においた4つのビジネス領域をサポートするソリューションを展開している。

 その4つの領域とは、マーケティング(Market)、販売(Sell)、サービス(Service)、購買(Buy)だ。

ビジネスを動かす「チーフ・エグゼクティブ・カスタマー」にいかに対応するか

「マーケティング」であれば、一人ひとりの“個客”に対応した、ニーズの把握と、適切なタイミングでのパーソナライズされた働きかけがソリューションとなる。小売業なら店舗、インターネット、モバイル、ソーシャル、コールセンターなどのさまざまなチャネルを最適に構成するオムニチャネルの実現がカギになってくる。

「販売」もまたオムニチャネルで、消費者の購買ニーズに適切に対応する、いつでもどこでもの販売を可能にすることが求められている。さらには、注文に対する供給体制も、持ち帰り、自宅に送る、コンビニに送る、店舗に送る、勤務先に送るなど、多様化するニーズに対応することが重要になる。

「サービス」では、購入後のアフターサービス段階における顧客満足こそが、顧客をロイヤリティの高い上得意客へと育成していくうえで必要な視点となる。

「購買」も、近年においてはますます企業の競争優位性につながる要素となってきた。コストを重視する購買だけではなく、一次サプライヤーだけでなく、2次、3次のサプライヤーのリスクも加味した購買活動を確立することが、よりスマートな購買・調達につながる。