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安東泰志の真・金融立国論

成長戦略に欠けている
リスクマネー供給=資金循環改善の視点

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第34回】 2013年6月24日
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安倍政権の新成長戦略が評価されなかった原因は、あまりに総花的で施策の全体像が体系的に説明されていなかったこと、企業の活性化に必要なアメとムチの政策のバランスが取れていなかったこと、そして、何よりも産業の新陳代謝の鍵である「リスクマネーの供給」が、資金循環の改善の観点から具体的に語られていないことである。特に、公的年金等の運用多様化を強烈に進めることこそ、改革の「一丁目一番地」である。

安倍政権の成長戦略は
なぜ評価されないのか

 6月14日、安倍政権の成長戦略「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」が閣議決定され、これでいわゆる三本の矢の最終章が公表されたことになる。しかしながら、その要旨が明らかになった6月初旬以降、株式市場はネガティブに反応している。また、「骨抜きの成長戦略」(『週刊ダイヤモンド』2013.6.22号)とまで酷評され、閣議決定後も評判は芳しくない。

 しかしながら、筆者は、この94ページの成長戦略には、世の中が期待していた多くのものがかなり含まれていると考えている。たとえば、雇用慣行については、解雇規制の緩和こそ具体的に入らなかったが、雇用維持型から労働移動支援型への政策転換が謳われているし、女性の活躍のための育児支援についても、明確な数値目標が掲げられている。そのほかにも、設備の加速償却の許容、ITの活用、教育、特区の創設、電力規制改革など多くの政策が盛り込まれている。

 ただし、問題は、①これらの政策が体系的にどう連関しているのかの全体像が見えづらいので、総花的な印象を与えること、②民間の活力を活かすと言いながら「アメ」(規制緩和)に対する「ムチ」(企業のガバナンス改革等)の施策が踏み込み不足であること、③農業政策において、農地集約化という根幹部分(農家に対する「ムチ」)に踏み込めていないこと、④企業の新陳代謝を促すと言いながら、ゾンビ企業を蔓延(はびこ)らせている根本的な原因である銀行の甘い資産査定基準の見直しに踏み込んでいないこと、⑤全体を通して必要となる資金と、それをどのように賄うのか、特に預金・年金等に偏在する家計部門の金融資産を、どのように活用するのかが具体的に示されていないこと、ではないだろうか。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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