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シリーズ・日本のアジェンダ 「解雇」で変わる?日本人の働き方

なぜ「解雇規制の緩和」は不要か
“できる解雇”と“できない解雇”の視点から考える
――日本大学准教授 安藤至大

安藤至大
【第3回】 2013年6月26日
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わが国では、規制が厳しいと言われることが多い「解雇」の問題。そうした認識を背景に、現在、政府の産業競争力会議等で「解雇規制の緩和」に関する議論が行われている。それに対し、安藤至大・日本大学准教授は「解雇規制の緩和は不要」であるとの立場を示しながらも、規制の周知・明確化の必要性を説く。また、安藤准教授は同時に議論されている「限定正社員の活用」に賛成の立場を示し、“(限定社員は)簡単に解雇できる”といった世間の認識には誤解があると語る。(本アジェンダの論点整理については第1回の編集部まとめを参照)

あんどう・むねとも
日本大学大学院総合科学研究科准教授。1976年東京生まれ。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授等を経て2005年より現職。専門は労働経済学、契約理論、法と経済学。著書に『脱格差社会と雇用法制』(日本評論社、2006年)『雇用社会の法と経済』(有斐閣、2008年)『教育の失敗~法と経済学で考える教育改革~』(日本評論社、2010年)(いずれも共著)など。
写真提供/雑誌『経済界』

 最近、「解雇規制の緩和」や「限定正社員の活用」といった雇用に関する話題に注目が集まっている。政府の複数の会議において検討が行われているからだ。では、これらの是非について、どのように考えれば良いのか。

 筆者は、解雇規制の緩和は不要であるが、規制内容の周知と明確化は必要であると考えている。また限定正社員の活用については、それにより安定した働き方が可能になる人が増えることが予想されるため、良いことだと考えている。本稿では、なぜそう考えたのかを説明したい。

最低限知っておくべき
雇用契約の「3つのルール」

 最初に、雇用契約について最低限知っておくべき3つのルールを押さえておこう。

①雇用契約とは、労働力と賃金を交換する契約である。

②契約したら守るのが原則だ。約束が果たされている場合には、契約の一方的な破棄はできない。

③しかし、どちらかが約束を守らなかった(守れなくなった)場合には、相手側は債務不履行を理由に契約を解除できる。

 これらのルールを前提として、まずは「解雇規制」について考えることにする。そもそも「解雇」とは、使用者側が(法律では、雇用主のことを使用者という)一方的に雇用契約を打ち切ることである。したがって、上記の3つのルールに従うなら、解雇には必然的に「できる解雇」と「できない解雇」があることが分かる。労働者側が契約内容を守って働いている場合には解雇はできないが、労働力の提供が行われていない場合には解雇できるということだ。

「できる解雇」と「できない解雇」とは何か

<できる解雇>

 「できる解雇」には3種類ある。懲戒解雇、普通解雇、そして整理解雇だ。まず懲戒解雇とは、あらかじめ就業規則に定めた懲戒事由に当てはまる行為を労働者がとった場合に行われる解雇である。例えば、採用時に経歴詐称があった場合や会社のカネを横領した場合などが該当する。このような事態が起こると、周囲の労働者や上司は、もうこの人には仕事を任せられないとか、この人とは安心して働けないなどと考えるだろう。結果として、この労働者は、今後は仕事を適切にこなせないことになる。このとき労働力の提供ができないのだから解雇されることになる。

次のページ>> 「解雇規制」とは何か
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いまの日本の経済、政治、社会が直面している旬のテーマを取り上げ、各分野の専門家に賛成・反対の立場から記事や論考を寄せていただき、議論を深めていく「シリーズ・日本のアジェンダ」。このシリーズでは、日本の新しい労働市場を形づくるための大きなカギとなる「解雇規制の緩和」の問題を取り上げる。

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