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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

もはや“胡錦濤路線”での統治は困難
習近平が「公正」を優先すべき3つの理由

加藤嘉一
【第7回】 2013年7月2日
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習近平政権がとるべき
重要思想&指導原理とは

 2011年秋のことだった。

 私は北京で、中国共産党内でイデオロギーと政策決定をつなぐための「理論武装」を担当する当局が主催した内輪の会議(以下「会議」)に参加していた。「紅い政権交代」の起点となる第18党大会を一年後に控えていた当時、その舞台となる北京では「胡錦濤政権の“科学的発展観”に取って代わる中国共産党の重要思想&指導原理をどう設定するか?」をめぐる議論が加速していた。

 部分的にではあるが、私もそのプロセスにコミットさせていただいた。私以外にも、欧米出身の投資家、起業家、学者などが一連の会議に参加したようである(同席はしなかった)。

 「中国の国家主席ほど難しいポジションは世界で類を見ない」

 これまで多くの日本人、アジア人、欧米人の口から聞かれた言葉だ。そのとてつもない難しさを自ら認識しているからこそ、「国家の方向性」という極めて重大なイシューを決めていく過程においてさえ、中国共産党指導部は外国人からの意見に積極的に耳を傾ける戦略と習慣を堅持してきた。

 国内外におけるすべてのパワーを国家建設という果てしない道のりに凝縮しようとする中国の為政者たち。「したたかさ」・「貪欲さ」・「学ぶ精神」という3つの姿勢に体現されるその統治スタイルを、この10年間、私は肌身で感じてきた。

“国家”、“人民”の問題解決には
“社会”というバッファーが不可欠

 「加藤さんが私の立場だったら、何を政策のキーワードに設定しますか?」
 「加藤さんが中国人だとしたら、指導者に何を一番求めますか?」
 「加藤さんが国家主席だとしたら、何をどう国民経済に訴えますか?」

 会議ではこうしたピンポイント、かつマクロ的な質問が主催者側から投げかけられた。私と同じくらいの年齢のエリート官僚がディスカッションの内容を淡々とメモにとり、整理していた。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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