日銀がお札を刷って解決できる問題ではない

――ご著書の中で下村治博士の「ゼロ成長論」を支持しておられますが、ゼロ成長とイノベーションを起こすことは矛盾しないのでしょうか?

「ゼロ成長論」の最も重要なポイントは、日本ほか多くの先進国が同じ状況ですが、人口が減少し、高齢者比率が高まり、労働人口比率が低下し、中産階級の膨張と可処分所得の急増が望めないときには、経済全般というパイが急増して行くようなファンダメンタルズはなくなったという現実を認識することです。

 戦後ベビーブームが起きて人口が増え、復興需要があり、所得倍増計画を実行できたような環境と現在は大きく異なります。一人当たりの経済活動規模が同じで、参加人数が減少するならば、設備は需要に対して常に余ってゆくのが自然です。デフレが自然なのです。この自然減を上回る活動を起さなければ、現状維持、即ち「ゼロ成長」もできません。これは日銀がお札を刷って解決できる問題ではないのです。

 一方、養う人が減り、養われる人が増え続けるのであれば、養う側の人は、よっぽど生産性を上げないと、全員の生活水準を維持することが出来ません。この生産性向上をもたらすのはイノベーション以外の何物でもありません。

次回は7月10日更新予定です。


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