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伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

もはや限界を迎えた中国経済
「成長方程式」が示す生産性上昇のカギとは?

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第19回】 2013年7月29日
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潜在成長力を上げなければ
持続的成長は不可能

 経済成長とは、中長期のトレンドの話である。景気刺激策によって需要を拡大してGDPを引き上げることは、一時的な成長率を高めることにはつながっても、持続的な成長を実現することにはならない。資本投資、技術革新、効率的な資源配分などで供給力を高めることにより、はじめて持続的な成長が実現する。

 経済学の用語を使えば、これはサプライサイドの問題ということになる。日本経済が、利用可能なさまざまなリソースを活用して、どこまで生産能力を高めることができるか――これがサプライサイドの問題である。

 経済学者は、経済成長の問題を分析するとき、よく成長方程式と呼ばれるものを利用する。成長方程式とは、次のような簡単なものである。

経済成長率=Σ個々の生産要素の増加率×その要素の分配率+TFP

 この式について簡単に説明しておこう。左辺の「経済成長率」は、通常はGDPの伸び率(物価上昇分を除いた実質値の伸び率)を意味する。

 右辺の「生産要素」とは、資本や労働などを示している。「その要素の分配率」とは、たとえば、労働の分配率であれば、GDPのなかで労働に分配される割合を示す。したがって、右辺の第一項は、資本や労働などの増加率にそれぞれの分配率をかけたものを、すべての生産要素について足し合わせたものである(Σは数列の総和を示す)。

 通常の単純な議論では、生産要素として、資本と労働のみを取り上げることが多い。たとえば、GDPのなかに占める労働分配率が80%、資本の分配率が20%であるとしよう。そして資本が3%で増加し、労働がマイナス1%で増加(つまり1%縮小)したとしてみよう。そのとき、右辺の第一項は、

0.2×0.03+0.8×(-0.01)=-0.002

 となる。つまり、生産要素の伸びで見れば、経済成長率にはマイナス0.2%分の影響が及ぶということになる。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

「アベノミクス」によって大きく動き始めた日本経済。いまだ期待が先行するなか、真に実体経済を回復するためになすべき「創造」と「破壊」とは? 安倍政権の経済財政諮問会議議員を務める著者が、日本経済の進むべき道を明快に説く! 

「伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論」

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