ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
「3次元プリンタ」は、製造業だけを激変させるのか?
【第2回】 2013年8月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
田中浩也 [ファブラボジャパン発起人/慶応義塾大学環境情報学部准教授]

「3Dプリンタ」と「ミシン」の意外な共通点とは?
――これからの世界をクリエイティブに生きるための
新しいリテラシーを考える
慶應義塾大学准教授/Fab9実行委員長 田中浩也氏 特別寄稿【第2回】

1
nextpage

最近にわかに注目を集めている3Dプリンタやレーザーカッターなどの技術革新は、普通の人々の未来にどのような影響を与えるのだろうか?前回の記事 で、通常「製造業の変化(俗に「ものづくり革命」と言われる)」の文脈だけに限定して議論されがちな「3Dプリンタ」に、まったく新しい光を当てた、「ファブラボ(Fablab)」の日本における発起人、田中浩也氏。今回は、8月26日に横浜で開催される第9回世界ファブラボ代表者会議の国際シンポジウムで話し合われるという、教育・社会・暮らし・働き方・生き方・生きがいといった普通の人々の未来にどのような意味を与えていくか、というテーマについてご寄稿いただいた。

なぜ、いま「3Dプリンタ」だったのか?
――オープンソースが生んだ草の根の知恵が世界を変える

 今回もまた最近話題の「3Dプリンタ(3次元プリンタ)」から話をはじめるのがわかりやすいだろう。

 最近さまざまな場所で聞くようになったこの種の機械だが、実は約10~20年前から存在していた。しかしまだ高額で大型であった時代、その機械の使い道は「大量生産製品の試作をつくること」すなわち「ラピッド・プロトタイピング(RP:迅速な試作開発)」に限られていた。企業や大学のような限られた特別な場所でしか用いられておらず、さらにいえば、うまく使用できずに埃をかぶったままになっている場所も多かったのだ。

 ところが数年前より急に、世界に「家庭用3Dプリンタ」なるものが普及しはじめる。そのきっかけは、いくつかの特許が切れたこと、そしてそれを機に、オープンソース(ネットなどで設計図を無料で公開すること)のスタイルで家庭用3Dプリンタを共同で開発し、情報を共有しながら進化させようとした人々が、世界中に同時多発的に現れたことによる。

 最初の発端をつくったひとりが、英国バス大学のエイドリアン・ヴォイヤー教授である。彼が公開した3Dプリンタは「RepRap」と呼ばれ、設計図がネット上に公開されている。かつ、彼の3Dプリンタは「3Dプリンタで3Dプリンタをつくる」という、生命のような自己増殖のコンセプトから生まれたものでもあった。それが世界中で品種改良されはじめたのである。

「親3Dプリンタで子3Dプリンタをつくる」基礎的な実験成功の様子。左がエイドリアン・ヴォイヤー教授

 ひとつの大企業が主導したわけでも、大型予算がついてはじまったわけでもなく、こうした草の根からのボトムアップな展開はほとんど予想外だったといえるだろう。数年前に発表された、大手シンクタンクなどの未来予想図を見ても3Dプリンタの登場について記述したものはほとんど見当たらない。「インターネット」の集合知から生まれるこうした展開は、時に専門家の予測さえも大きく裏切るのである

 インターネット「後」は、「予測」に従って社会が動くというよりも、突然の発明によって目の前の風景がガラリと変わることが、以前よりもはるかに起こりやすい環境になっている。だからこそ、「意志」を持って生きることがますます大切になりつつある。MITメディアラボの伊藤穣一氏が「地図よりコンパスを」と言うのはこうした変化を背景としているのである

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
まいにち小鍋

まいにち小鍋

小田真規子 著

定価(税込):本体1,100円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
簡単で安くて、ヘルシー。ポッカポカの湯気で、すぐにホッコリ幸せ。おひとりさまから共働きのご夫婦までとっても便利な、毎日食べても全然飽きない1〜2人前の小鍋レシピ集!「定番鍋」にひと手間かけた「激うま鍋」。元気回復やダイエットに効く「薬膳鍋」や、晩酌を楽しみたい方に嬉しい「おつまみ鍋」など盛り沢山!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


田中浩也 [ファブラボジャパン発起人/慶応義塾大学環境情報学部准教授]

1975年、北海道札幌市生まれ。京都大学総合人間学部卒業、東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)。
東京大学生産技術研究所助手などを経て、2005年慶應義塾大学環境情報学部専任講師、2008年同准教授。2010年マサチューセッツ工科大学(MIT)建築学科客員研究員、ファブラボジャパン発起人(ファウンダー)。専門分野は設計科学(デザインサイエンス)、人工物工学(デザインエンジニアリング)。
2010年度に日本人で初めて"How to make almost anything"(ほぼあらゆるものをつくる方法)受講者・修了者となる。新しいものづくりの世界的ネットワークである「ファブラボ(Fablab)」の日本における発起人であり、ファブラボジャパンを立ち上げ、2011年には鎌倉市に拠点「ファブラボ鎌倉」を開設した。
著書に『Fablife―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」』(オライリー・ジャパン)、監修書に『Fab―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ』(ニール・ガーシェンフィールド著、糸川 洋訳/オライリー・ジャパン)などがある。


「3次元プリンタ」は、製造業だけを激変させるのか?

「3次元プリンタ」という言葉を頻繁に聞くようになってきたが、この新しいテクノロジーがもたらす変化や恩恵は、本当に製造業にだけ関わるものなのだろうか? こうした技術革新の可能性を、生活や仕事だけではなく、働き方に至るまで見出そうと活動する「ファブラボ(Fablab)」の日本代表であり、8月21日に控えた世界会議の実行委員長を務める田中浩也氏に、インターネットに匹敵するというその変化の本質について、ご寄稿いただいた。

「「3次元プリンタ」は、製造業だけを激変させるのか?」

⇒バックナンバー一覧