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3DプリンターとGoogle Glassの共通点とは?――未来の技術トレンドを確実に予測する方法

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第5回】 2013年5月21日
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3DプリンターとGoogle Glassの共通点

 技術予測の方法を説明する前に、下記のクイズを考えてみてください。

Q. 3DプリンターとGoogle Glassには共通点がありますが、
  それは何でしょう?

 答えは、どちらも発明自体は約20年前なのに、いまになって話題になっているということ。20年という数字はもちろん特許の有効期間を意味してます。つまり、3Dプリンター技術は、当該分野の特許を最も持っているといわれる3Dシステムズ社CTOの米国人Charles W. Hull氏が1986年後半に出願した特許(米国特許:4575330)がルーツとされ、さらに重要な基本特許も1990年代前半に出願されています。

 3Dシステムズ社は航空宇宙や自動車の試作品用に高価で高性能な立体製造機を販売していることもあり、同社は他社に対しては特許侵害訴訟を頻繁に起こしており、少なくとも他者から見ると仮に侵害していなくても、訴訟を起こされた場合の負担を考えると新規参入が容易とはいえない分野だったようです。

 しかし、米国特許の有効期間は20年間。3Dプリンター技術に関する多くの基本特許が切れ、特許侵害を気にせずに3Dプリンターを製造できるようになったことが、いまの3Dプリンターのブームの背景にあります。

 一方、Google Glassはヘッドマウントディスプレー&カメラですが、ヘッドマウント型デバイスを含む身に着けるタイプのコンピュータ、つまりウェアブルコンピュータに関して、ザイブナー(Xybernaut)という米国のベンチャーが複数の基本特許を持っていました。

 このためヘッドマウントディスプレー単体ならばいいのですが、コンピュータと組み合わせると特許的な問題が心配になる状況でした。ザイブナーは特許ライセンスには積極的でしたが、ただ付帯条件が多かったといわれます。当方が知る限りでも、2社の大手コンピュータ会社がそれぞれ独自にウェアラブルコンピュータを開発したときも、ザイブナーは特許ライセンスの条件として、ザイブナーとの共同開発という扱いで発表・発売や、ザイブナー向けのOEM供給の一部を自社ブランドで販売するという扱いを求めたそうです。なお、ザイブナーは2005年7月に自己破産して、特許ライセンスに特化した会社になったそうです。

5年後に注目される技術は
15年前に生まれている

 この二つは氷山の一角です。特許が足枷となり、有益な技術なのに製品化ができなくなったり、ライセンス料負担から高額商品に限定されていたけれど、特許有効期間切れとともに市場が広がるケースは少なくない。こうしたケースには二つのパターンがあると考えています。

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佐藤一郎[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。


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分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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