ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
「3次元プリンタ」は、製造業だけを激変させるのか?
【第1回】 2013年7月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
田中浩也 [ファブラボジャパン発起人/慶応義塾大学環境情報学部准教授]

「3次元プリンタ」は、
製造業だけを激変させるのか?
――慶應義塾大学准教授/Fab9実行委員長
田中浩也氏 特別寄稿

1
nextpage

「3次元プリンタ」という言葉を頻繁に聞くようになってきたが、この新しいテクノロジーがもたらす変化や恩恵は、本当に製造業にだけ関わるものなのだろうか?こうした技術革新の可能性を、生活や仕事だけではなく、働き方に至るまで見出そうと活動する「ファブラボ(Fablab)」の日本代表であり、8月21日に控えた世界会議の実行委員長を務める田中浩也氏に、インターネットに匹敵するというその変化の本質について、ご寄稿いただいた。

「3次元プリンタ」がもたらす変化の本質とは?
デジタル技術を用いたものづくりの「ワールドカップ」が日本に

 第9回世界ファブラボ代表者会議が、8月21日から27日まで、横浜で開催される。そして誰もが聴講できる国際シンポジウムが、8月26日に開催される(申し込みはこちら)。しかしまず「ファブラボ(Fablab)」とは何かを説明しておかなければならないだろう。

ファブラボでのワークショップの様子。つくることで、人がつながり、コミュニティがでていく
拡大画像表示

 ファブラボとは、3次元プリンタやレーザーカッターなどの技術革新を背景に、生活・社会・産業・働き方まであらゆる領域に渡って革新的な可能性を生み出そうとするメンバーの集まりである。世界50ヵ国200ヵ所以上に拠点を持ち、常に国境を超えて連絡をとりあっている。今回の会議は、そうした世界中の代表者が一堂に介するものである。つまるところ、デジタル技術を使った「ものづくり」の多国籍合宿、サッカーでいうところの「ワールドカップ」のようなものだ。

 読者のみなさんはおそらく「3次元プリンタ」という言葉を今年ニュースなどで聞いたことがあると思う。そしてそれが国内では「製造業を復活させる」という文言で宣伝されていることも。

 しかし、ファブラボのメンバーの認識は違う。米オバマ大統領は確かに今年の初めに、「3次元プリンタが新しい産業をつくる」と述べた。しかしそれは、旧来の製造業が復活するのではなく、コンピュータやデジタル技術と密接につながった、新しいものづくりが、これまで世の中にはなかったジャンルの産業として登場するということなのだ。ITがフィジカルな世界にまで「染み出して」くるのである。

コップを海外に「転送」できる?
必要なものを、必要なだけ「プリント」する時代に

 では新しいジャンルの産業とはどういうものか。それはたとえば「ものをデータで送ることができる」というものだ。たとえばコップを海外に送りたいと思ったら、もう梱包する必要はない。3次元スキャナという機械を使ってコップをデータ化し、メールに添付して送付。そして送り先で3次元プリンタを用いて物質化すれば、それは「運ばれた」ことになる。昔から夢見られた「遠隔転送技術」だ。

 それだけではない。3次元プリンタでは、たとえば、足が折れた椅子の足を直すことも、おじいさんの耳のサイズにぴったり合う補聴器をつくることも、自分が小さい頃住んでいた街並みを模型として再現することもできる。これらは、「工業製品」をつくっているわけでも、「製造業」を復活させているわけでもない。デジタル技術の軽やかな感覚で、「もの」を、まさに「プリント(印刷)」感覚でつくっているのである。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

トレーシー・カチロー 著/鹿田 昌美 訳

定価(税込):本体1,600円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
子どもの豊かな心を育て、頭と体を伸ばしていくために親が知っておきたいことについて、最新の科学研究をもとに「最も信頼」できて「最も実行しやすい」アドバイスだけを厳選して詰め込んだ貴重な本。子にかけるべき言葉、睡眠、トイレトレーニング、遊び、しつけまで、これ一冊さえ持っていれば大丈夫という決定版の1冊!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


田中浩也 [ファブラボジャパン発起人/慶応義塾大学環境情報学部准教授]

1975年、北海道札幌市生まれ。京都大学総合人間学部卒業、東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)。
東京大学生産技術研究所助手などを経て、2005年慶應義塾大学環境情報学部専任講師、2008年同准教授。2010年マサチューセッツ工科大学(MIT)建築学科客員研究員、ファブラボジャパン発起人(ファウンダー)。専門分野は設計科学(デザインサイエンス)、人工物工学(デザインエンジニアリング)。
2010年度に日本人で初めて"How to make almost anything"(ほぼあらゆるものをつくる方法)受講者・修了者となる。新しいものづくりの世界的ネットワークである「ファブラボ(Fablab)」の日本における発起人であり、ファブラボジャパンを立ち上げ、2011年には鎌倉市に拠点「ファブラボ鎌倉」を開設した。
著書に『Fablife―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」』(オライリー・ジャパン)、監修書に『Fab―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ』(ニール・ガーシェンフィールド著、糸川 洋訳/オライリー・ジャパン)などがある。


「3次元プリンタ」は、製造業だけを激変させるのか?

「3次元プリンタ」という言葉を頻繁に聞くようになってきたが、この新しいテクノロジーがもたらす変化や恩恵は、本当に製造業にだけ関わるものなのだろうか? こうした技術革新の可能性を、生活や仕事だけではなく、働き方に至るまで見出そうと活動する「ファブラボ(Fablab)」の日本代表であり、8月21日に控えた世界会議の実行委員長を務める田中浩也氏に、インターネットに匹敵するというその変化の本質について、ご寄稿いただいた。

「「3次元プリンタ」は、製造業だけを激変させるのか?」

⇒バックナンバー一覧