上田 今回のテーマは日本銀行です。日銀と言えば、総裁人事が二転三転して、「ねじれ国会が生んだ悲劇」と言われました。その日銀とはいったいどんな組織なのか。まずは概要をうかがいましょう。
竹中 日銀は一般の営利企業とは違い、公の目的を果たすために作られた民間組織です。その役割は主に3つ。1つ目は日本銀行券(紙幣)を発行すること、2つ目は物価の安定を通じて経済を発展させること、そして3つ目は金融システムを安定させることです。
上田 なんだか難しい話ですね。
竹中 まず紙幣の発行ですね。貨幣経済では、その根底に「信用」があります。たとえば、1万円に価値があるとすれば、それは皆がその価値を信用しているからです。裏返せば、「信用がある日銀が紙幣を発行するから、1万円の価値を信用できる」という考え方です。
上田 しかし、紙幣をむやみに流通させるわけには行かないですね。
竹中 そう。紙幣を流通させるときは、何かの資産をマーケット(金融市場)から買うという形をとります。たとえば、金融機関から国債を受け取り、紙幣を渡すことによって市場に流通させるんです。
お金の量と金利で
景気をコントロール
上田 それでは、物価を安定させて経済を発展させるためには、どのようなことをするのでしょうか。
竹中 物価を安定させるために、金利を上げたり下げたりして、通貨の流通量をコントロールしています(たとえば、好景気になるとお金を使う人が増えて物価が上がり過ぎるため、銀行からお金が流出しないように預金金利を上げる。不景気で物価が下落している場合はその逆で、お金が流通するように金利を下げる)。
上田 以前は公定歩合を上げたり下げたりして景気をコントロールしていましたが、今ではさほど影響力がないと聞きます。
竹中 公定歩合は日銀が民間銀行に貸し付けるときの金利です。民間銀行の金利も基本的に公定歩合に連動するため、世の中の景気に影響を与える重要な指標となっていました。ただし(ゼロ金利政策などを経て超低金利が続く)現在では、公定歩合は以前ほど重要視されていません。