ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
山田厚史の「世界かわら版」

集団的自衛権は憲法改正の露払い
が、「日本を取り戻す」は時代錯誤

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第42回】 2013年8月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 8月15日、靖国神社に参拝したのは「小粒の閣僚」だけだった。首相は玉ぐし奉納にとどめ、春の例大祭では国会議員を引き連れて参拝した副首相の姿もなかった。

 国際世論の反発に気遣いながら、小粒でも閣僚の参拝で意地を見せ、どこか悔しさがにじんだ今年の靖国神社。参議院選挙で大勝しながら、地金をむき出すことは思いとどまった安倍首相だが、満たされぬ思いが噴出する先は集団的自衛権。解釈改憲を先行させ、憲法改正につなげようとしている。

挫折の記憶

 政権を投げ出す屈辱を味わった安倍首相にとって集団的自衛権は挫折の記憶を深く刻んだ案件である。第一次安倍内閣の2007年、憲法解釈を変えて集団的自衛権に道を開こうと有識者懇談会(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)を立ち上げた。翌年、懇談会は期待通りの結論を出したが、時すでに遅し。政権は崩壊寸前、憲法解釈の変更に手をつけることはできなかった。

 後任の福田康夫は安倍の置き土産に冷ややかだった。懇談会の結論は棚上げされ、集団的自衛権は、見果てぬ夢に終わった。

 再登板した安倍は早速、有識者懇談会を復活させた。座長は以前と同じ柳井俊二元駐米大使。有識者の集まりといっても政権が選んだ右派の論客が目立つ。福田元首相が封印した報告書の埃をはらって、今様にリメークするのがお仕事だ。

 集団的自衛権は米国が強く求めていたものである。中東で戦争する米国は一緒に戦ってくれる同盟国を必要とした。日米安保条約は、日本が攻撃されたら米国が参戦する約束だ。その米国が世界のために戦っている時、日本は何もしないのか、と「同盟の片務性」を米国は問題にした。

 代表的な論者はブッシュ政権で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージである。ベトナム戦争に従軍した軍人出身の政治家、共和党の対日政策を担った「ジャパンハンドラー」の筆頭である。

 「憲法9条が日米同盟の障害」とも発言し9.11以後は日本に対し、「ショウ・ザ・フラッグ(旗色を鮮明にしろ)」「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(戦場に立て)」などと高圧的に参戦を迫った。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


山田厚史の「世界かわら版」

元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

「山田厚史の「世界かわら版」」

⇒バックナンバー一覧