ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
日本経済の憂鬱
【第5回】 2013年7月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
佐和隆光

ファシストでないにせよ自由と民主主義をおびやかす安倍政権

1
nextpage

安倍政権は、早晩、憲法改正に乗り出すだろう。自由民主党の「日本国憲法改正草案」をつらぬく基本理念は、自由主義・民主主義・個人主義の抑制、すなわち「近代の超克」の再来のように見受けられる。アベノミクスの正体は国家資本主義の再来にほかならない。

アベノミクスの一寸先は闇

 先に私は、アベノミクスは壮大な社会実験だといったが、実験の結果が吉とでるか凶とでるかは、いまだ定かにはみえてこない。

 今後とも株高が持続するか否か。許容しがたいほどまで円が安くなるか否か。成長戦略が民間投資を誘発するに足るか否か。インフレ期待が、一部資産家による高級品消費にとどまらず、一般消費者の財・サービス消費をも増勢にむかわせるか否か。長期金利の上昇が危険水域を越えるか否か。企業業績の好転が賃金上昇に連なるか否かなどなど。社会実験の結果については、多大の不確実性がぬぐいきれない。

 実験結果のみきわめがつきにくい最大の理由は、日本銀行の首脳陣に居並ぶリフレ派エコノミストが「異次元金融緩和」の実体経済におよぼす波及効果を「あり」とする論拠の決め手が、「インフレ期待(予想)」という計測(予測)不可能な心理的要因だからである。「期待」ないし「予想」は心もとなくゆれうごく。ゆえに、アベノミクスの効果について一寸先(いっすんさき)は闇なのである。

アベノミクスの成功は憲法改正への必要な経過点

 もともと自民党内右派の安倍首相は、アベノミクスの成功を確信したのち、ただちに本性をあらわにし、憲法改正にのりだすものと予想される。2013年5月1日、アラブ諸国歴訪中の記者会見で安倍は、憲法96条の改正を、7月21日に予定される参院選の公約にすると語った。憲法96条は「改憲を発議するには、衆参両院の3分の2以上の賛成を必要とする」ことを定めているが、3分の2を過半数に改めようというのである。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
  • ダイヤモンド・オンライン 関連記事
    お金のウソ

    お金のウソ

    中野晴啓 著

    定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2017年7月

    <内容紹介>
    誰も教えてくれなかった「お金の真実」!親の言うことを聞いているとお金が減る。 20代、30代がこれから生き抜くための本当に必要で最低限の知識。 成長なき「成熟経済」の時代に、お金を着実にふやして、守り、安心を手に入れるには、 預金、保険、銀行、投資…お金をふやすには、どうつきあうのが正解?

    本を購入する
    ダイヤモンド社の電子書籍

    (POSデータ調べ、8/6~8/12)



    佐和隆光(さわ・たかみつ) 滋賀大学長。京都大学名誉教授。専攻は計量経済学、エネルギー・環境経済学。経済学博士(東京大学、1971年)。

    1942年和歌山県生まれ。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了後、同大学助手、1969年に京都大学経済研究所助教授、スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授などを経て80年より京都大学経済研究所教授。京都大学経済研究所所長、京都大学大学院エネルギー科学研究科教授、国立情報学研究所副所長などのほか、国民生活審議会、交通政策審議会、中央環境審議会の各委員を歴任。1976年よりEconometric SocietyのFellow。1995年より2005年まで環境経済政策学会会長。2007年11月紫綬褒章受章。『計量経済学の基礎』(東洋経済新報社、1970年度日経・経済図書文化賞受賞)をはじめ、『経済学とは何だろうか』(岩波書店、1982年)、『平成不況の政治経済学』(中央公論社、1994年)、『漂流する資本主義 危機の政治経済学』(ダイヤモンド社、1999年)、『グリーン資本主義』(岩波書店、2009年)など著書多数。


    日本経済の憂鬱

    政治は極右、経済はオールド・ケインジアンという矛盾だらけの安倍晋三政権は、本当に日本を復活に導けるのか?『日本経済の憂鬱 デフレ不況の政治経済学』刊行を記念して、同書の核にもなっている、アベノミクス正体解明のエッセンスをご紹介します。

    「日本経済の憂鬱」

    ⇒バックナンバー一覧