今年3月、世界で初めて海底のメタンハイドレートからメタンガスの生産に成功した日本。前編では、日本近海に大量に眠るメタンハイドレートとは何かについて解説してきました。今の日本のエネルギー事情に鑑みると、メタンハイドレートには大きな期待がかかっていることも分かってきました。では、いま話題の「シェール革命」のように、メタンハイドレートでもメタンガスを大量に生産できるような“革命”が起こるのでしょうか。残念ながら、それほど単純なことではなさそうですが、大きな可能性があることは間違いなさそうです。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

南海トラフに眠る
大量のメタンハイドレート

今年3月、世界で初めて海底のメタンハイドレートからメタンガスの採掘に成功した。写真はその際のもの (写真提供:JOGMEC)

 メタンハイドレートは、“燃える氷”とも表現される、水とメタンガスで構成される物質のこと。正確には「氷」ではないのですが、見た目が氷そのものなので、こう表現されます。メタンガスは天然ガスの主成分であり、ゆえに“燃える”となるわけです。

 このメタンハイドレートは、「低温」で「高圧」という二つの条件が揃った環境下で、安定して存在する物質です。そんな条件の場所とは、具体的には永久凍土層や水深500メートルよりも深い海底の土の中になります。

 日本近海にはメタンハイドレートが大量に存在することが分かっていました。最近の調査の結果、東部南海トラフのメタンガスの原始資源量(採掘可能・不可能を問わない資源の総量)は、現在分かっているだけで日本が2011年度に輸入した液化天然ガス(LNG)の11年分に相当します。