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〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

「はんだづけ」一つで、あなたも世界を変えられる。
つくり手の「プラットフォーム」としての
ファブラボが持つ可能性とは?

――8/26、世界ファブラボ会議(Fab9)最速レポート

瀬戸義章 [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]
【第7回】 2013年8月28日
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〈ものづくり〉とは、どこかの企業に属していたり、工作機械を持っていたりしないとできないことなのだろうか? これまで、「つくり手」になるにはハードルが高かったが、そのハードルを大きく引き下げている「場」こそ、ファブラボといえるだろう。そこでは、誰もがつくり手となって互いに学びあうことで、次なるイノベーションの種が続々と生まれているのだ。
今回は、8月21日から27日にかけて開催された世界ファブラボ会議での画期的な、そして驚くべき成果の中から、問題解決型ものづくり「ソーシャル・ファブリケーション」を体現するプロジェクトをいくつか紹介する。「つくり手」のプラットフォームとしてのファブラボ、そこで起こっている化学反応にこそこれからの〈ものづくり〉の可能性が詰まっていることを、ぜひ実感してほしい。

「ものづくり」は、楽しくあるべきだ!
いざ、「つくり手」の祭典、世界ファブラボ会議へ

 エレベーターから降りたとたん、パチパチパチッという音が鳴り響く。「自動拍手マシン」による歓迎だ。人の動きをセンサーが検知して、圧縮空気で両腕が拍手をする仕組みである。世界ファブラボ会議の幕開けとして、じつに「らしい」演出の一つだった。

 8月21日(水)から27日(火)にかけて、横浜市で世界ファブラボ会議が行われた。世界39ヵ国から集まったのは、250人にのぼるファブラボの運営者・関係者たち。そのメンバーは、エンジニアやデザイナー、研究者、建築家、経営者から行政関係者とさまざまで、肩書きも一つとは限らない。

ファブラボ(Fablab)とは、デジタル工作機器を備えた市民のための実験工房である。工房は世界各地に存在しており、年々倍増している。ファブラボのコアメンバーが集う代表者会議は、ノルウェー、南アフリカ、オランダ、インド、ペルーなど世界各地で行われてきた。横浜市で開催された今回の会議は、第9回にあたる。

国際シンポジウムのようす
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 「代表者会議」というといささか硬く聞こえるが、実際はお祭りのようでもあり、合宿のようでもある。ファブラボ(Fablab)の「ファブ」には、「Fabrication(ものづくり)」だけでなく、「Fabulous(楽しい・愉快な)」の意味が込められているが、まさにそのことが実感できるイベントだった。会場に「楽しい」空気感をつくっているのは。「顔の見える関係」を大切にするファブラボの思想だ。直接会えた喜びが、そこかしこに充満している。

たとえ地理的に遠く離れていても、志をともにする「人」がそこにいると知ることで、他者を受け入れ、ノウハウを互いに分かち合い、発展させていくオープンソースの文化が育まれる。ファブラボは、デジタル工作機械を利用できるだけの施設ではない。この文化があるからこそ、世界中のつくり手たちがファブラボのネットワークに参加し、自分自身が持つ問題意識に向き合い、ものづくりを通じて自由に自己表現し、素晴らしい取組の数々を進めている。

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瀬戸義章(せと・よしあき) [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]

1983年、神奈川県川崎市出身。長崎大学環境科学部卒業。都内の物流会社でリユースビジネスの広報に携わった後、独立。東南アジアのリサイクル事情や、東日本大震災の復興の様子を取材して歩く。2012年、発展途上国向けのプロダクトデザイン&ビジネスコンテストである「See-D Contest2012」にて最優秀賞をチーム「tranSMS」の仲間と共に受賞し、2013年から東ティモールへの導入・実施を始めている。著作に『「ゴミ」を知れば経済がわかる』(PHP研究所)がある。


〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

日本産業には欠かせない、〈ものづくり〉という言葉。だが、いつからかこの言葉は力を失ってはいないだろうか? 大量に消費されることを前提とした〈ものづくり〉に、使い手である消費者だけではなく、作り手である生産者も、疲弊してはいないだろうか。

そこで本連載では、いま日本を含む世界で密かに新しい〈ものづくり〉の潮流である、問題解決型ものづくりともいうべき「ソーシャル・ファブリケーション」の世界を様々な側面から紹介したい。

「ものづくりを通じて、社会課題を自分ごと、自分たちのこととして解決する」という可能性を知るとき、大量生産・大量消費のなかで分断された作り手と使い手は再びつながり、国境を超えたビジネスが立ち上がる。

「〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?」

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