
DXブームを背景に好業績が続くIT業界。富士通やNECなど大手SIerの復権が進む中、5年後の競争力に決定的な影響を与える新たな競争軸も浮かび上がってきた。長期的には「利益率40%」の企業が登場してもおかしくない一方、反対に上位企業以外は大淘汰の憂き目に遭う激変期に突入する可能性も。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#12では、これからのIT業界の構造を一変させる重要テーマについて解説。各社の業績見通しに加えて、成長が期待できる有望企業について明かしていこう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
大手3社の復権が一服
5年後の競争力を左右する重要テーマは?
ここ数年のITセクターにおけるメインテーマは、NECや富士通、NTTデータグループなど「大手の復権」だった。
特に、NECや富士通はITセクターにおけるトップ企業ながら、長年構造改革を迫られ、業績や株式市場で出遅れてきたSIer(システムインテグレーター)の代表格だった。2023年央のPER(株価収益率)は富士通、NEC共に10倍台半ばと低迷。収益性の高い野村総合研究所などに水をあけられている状態だった。
ところが、NECと富士通の株価は、直近で2000年ごろのITバブル期以来となる高値圏での推移を続けており、株式市場での評価を取り戻している。
背景にあるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展だ。日本銀行の資料によると、20年に約3.9兆円だった企業のソフトウエア投資額は、25年には約6.2兆円まで急増(計画値)。新型コロナウイルス禍以降、多くの企業がデジタル投資に莫大な資金を投じている。また、老朽化した基幹システムの更新ラッシュといった背景から、案件の大型化に加えてレガシーシステムへの対応も必要となり、知見のある大手ベンダーに追い風が吹いてきた。
さらに、富士通、NEC共にノンコア事業の切り出しや低収益事業の改善、既存事業の収益性改善などの構造改革にも力を入れてきた。その成果もあって、強い需要を背景に株式市場でも主役に躍り出てきたのだ。
しかし、今後も最大手の業績の伸びは期待されるものの、株高を更新したこともあり、投資テーマとしては一服した感もある。「今期の予想増益率の上位を見ると、最大手3社から新興企業や中堅企業へ分散している。大きな投資テーマは薄れ、短期的な相場観としては各社の個別要因によるところが大きい」と大和証券の上野真チーフアナリストは解説する。
一方で、上野氏は「中長期的に見れば、ITセクターにおいて各社の競争力を左右する、重要なテーマが存在する」と指摘する。
最大手の復活に道筋がついたいま、ITセクターにおける新たな競争軸とは何なのか。そして、その競争軸の中で有望な企業とはどこなのか。
実は、上野氏の見立てによると、今後長期的にはITセクターの上位企業の多くが20%超の利益率になってもおかしくないという。中では40%に迫る企業すらもあり得るという。次ページでは、富士通、NEC、野村総研など主要企業の業績予想と共に、その全貌を詳細に解説していこう。
