「新しいもの」は、いつも「謎」に包まれている。価値があるのかどうかが、前例がないためにわからないのだ。だから、その謎の先に本当に未来がある、と多くの人々に理解してもらうまでには、たくさんの「壁」がある。起業はまさに、その壁との持久戦だ。
たとえば、世界中の商品をバイヤーから購入できるソーシャルショッピングサイト「バイマ(BUYMA)」を生んだエニグモ。そして、世界の栄養失調を救い、ジェット燃料にもなる「ミドリムシ」の屋外大量培養に成功したユーグレナ。この2社の起業も、この壁との戦いだった。「世界初」を目指して達成したことで共通する2社だが、サービスやテクノロジーが生まれたばかりの起業当初は、会社も彼らが確信していた未来も、やはり「謎」の存在だったのだ……。
ほとんどのベンチャー企業が3年以内に終わっていくなか、彼らはいかに起業し、壁を乗り越えてきたのか。株式会社エニグモ代表取締役最高経営責任者・須田将啓氏、株式会社ユーグレナ代表取締役社長・出雲充氏に語り合っていただいた。(取材・構成:森オウジ/写真:宇佐見利明)
「ベンチャーなら、世界初を仕掛けろ」
エニグモとユーグレナに共通する遺伝子とは?
出雲 分野こそ違いますが、須田さんは僕にとってはお兄さんみたいな存在です(笑)。『謎の会社、世界を変える。――エニグモの挑戦』を通して社風もいろいろに学ばせていただいています。僕の今の目標はキリマンジャロ登頂なんですけど、一方で須田さんは、約230~250kmのサハラ砂漠を走破するサハラマラソンに出場されていたりする。
須田 僕からすると出雲さん、そしてユーグレナは、まさに「ザ・ベンチャー」という感じがする会社ですね。人類の大きな課題をテクノロジーで解決するということに、リスクマネーを集めて勝負して、結果を出している。
最初は、大学の研究か何かから生まれたのかな?と思っていたんですが、実際は違っていた。出雲さんがバングラデシュで出会った、栄養失調による深刻な社会問題に始まる発想からユーグレナの実現までが、一貫されていた。そんな想いのリアルさが、結果的に世界初のミドリムシの人口培養を成し遂げた。これぞベンチャーですよ。本当に、すごく憧れています。
出雲 あの、僕この前シャンパングラスを「バイマ」で買ったんです。
須田 ありがとうございます(笑)。
出雲 買った時に「バイマは個人のバイヤーが仕入れているもので成り立っているマーケットなので、温かくやりましょうね」という趣旨のことが書かれていることに気づいて。僕、そんなこと書いてあるECサイトって初めて見たんです。そして、実際にバイヤーさんとやりとりができるというのも、なんだか新鮮でしたね。
世界中のバイヤーと売り買いができるバイマに限りませんが、エニグモのサービスを使うと「ああ、インターネットってこういうことができるんだ」というのを実感させてくれます。インターネットで何が一番重要だったかというと、個人が情報発信するコストが非常に安くなったことだと思うんです。それによって、離れた“個”がつながり合う。そんなインターネットの素敵なところを、身近な買い物で、しかも世界初のサービスで味わわせてくれる。エニグモのサービスにはそういうよさを感じますね。