米国のシリア攻撃は、オバマ大統領が議会にその承認を求める方針に転換し、早くても9日以降に先送りされた。これにより、株式市場も、投資家の中東リスクへの警戒感が弱まり、持ち直している。
言うまでもなく、米国の性急なシリア攻撃は誰のためにもならない。とりわけ米国の威信が失墜し取り返しのつかない事態に陥る恐れがある。
当面懸念すべきことが3つある。
「世界の悪を排除する」のは
米国の義務・権利ではない
(1)何よりも、現状での米国のシリア攻撃には正当性、合法性がきわめて乏しい。
アフガン、イラク両戦争には、「9.11」国際テロに対する自衛戦争の要素もあった。だから、国連憲章で認められた「個別的自衛権」や「集団的自衛権」の発動とみなされる余地もあった。
だが、今回、米国はシリアから武力攻撃を受けてはいないからどう考えても米国の自衛戦争ではない。
そうすると、今回の米国の軍事介入は、国際社会の意を受けた「警察行動」として正当化される他はない。
しかし、国連安保理では中国とロシアが攻撃に反対し、“特別の関係”にある英国も軍事介入の不参加を決めた。
だから、米国がこのまま予定通り開戦に踏み切れば、米国の内外から攻撃の正当性を強く批判されるだろう。