「部下が思いどおりに動いてくれない」「自主的に行動しない」「部下にもっとやる気を出してもらいたい」といった悩みを持っている上司は少なくありません。しかし、その背景に、部下とのコミュニケーションに問題があることも……。ちょっとした言い回しで、部下のやる気を引き出すことができます。

二人の新人リーダー、チームの業績を伸ばしたのは?

 ある会社で同期の二人が、同時にマネージャーに昇進しました。でも、この二人は部下との接し方がまるで正反対。

 部下に指示・命令をきっちり出して指導し、部下の言い訳を許さないAさん。部下に対して支配的・威圧的です。メンバーはAさんと話しているとき、萎縮しています。会議では、Aさんばかりが話しています。
 一方のBさんは部下と気軽に冗談を言い合い、笑っていることもしょっちゅうです。指示・命令は、最低限のみ。会議でも、Bさんが話すよりも、むしろ部下のほうが話すことが多く、それに対してBさんは相槌を打っています。たまに部下に質問をするときも、話しやすいように気を遣っています。

「上司は、部下に対しすべてに勝っていなくてはならない」と思っているAさんは、Bさんに対して「そんなことやっていたら部下にナメられるだけだ。もっと厳しくしなくてはダメだ」なんて心配していました。

 昇進してから6ヵ月が経ちました。どちらのチームの方が業績を伸ばしたでしょうか。実は、Bさんのチームだったのです。

相手が受け取りやすい言葉を投げよう

 Bさん、実は仕事をしていないように見えて、しっかりマネージャーの仕事はしていたのです。一方のAさんは、プレーヤーとしての仕事はしていましたが、マネージャーとしての仕事をしていなかったのです。
 マネージャーの仕事は、部下の力を最大限に引き出し、最高のパフォーマンスを出すことです。Bさんは部下の話をしっかり受け止め、キャッチボールのように相手が受け取りやすい言葉を投げかけていたのです。
 質問するときは、部下が答えやすい形で質問する。部下がもっと話したくなるような相槌を打つことを心がけていました。