安倍政権は、消費税率引き上げと引きかえに、3%の増税のうち2%分を経済対策で還元するという。スーパーなどに、消費税還元セールを禁止しておきながら、自らは2%分還元するというのでは洒落にもならない。大盤振る舞いの背景には、公共事業の拡大をなどを目論む古い自民党が見え隠れする。新たな国債を発行しての補正予算・経済対策は、財政再建という消費税増税の趣旨と真っ向からぶつかるので市場のしっぺ返しを受ける。

大盤振る舞いの補正予算

 未だ正式な決定ではないが、安倍政権はようやく消費税率の8%への引き上げを決断したようだ。安倍政権にとって、国民に痛みを強いる初めての政治決断だ。筆者も大いに評価したい。ファイナンシャルタイムズ紙も社説で日本の経済政策を評価したが、実に何年振りのことだろうか。

 しかし、手放しで評価する気にはなれない。なぜなら一方で、社会保障・税一体改革が掲げた「社会保障の充実」と「財政再建」という目標が損なわれつつあるからだ。

 ここまで消費税率引き上げの最終決断を引き延ばしてきたのは、財政政策・予算に関する主導権を(財務省ではなく)官邸が握る、というパワーゲームを行っていることによる。

 わが国憲法では、予算編成権は内閣にあるので、官邸が予算編成権を持つことは正当なことである。

 しかし、予算編成権を持つからには、わが国がおかれた財政事情を正確に認識し、個別の利害を超越しつつ徹底した歳出削減を行っていくという固い決意がなければならない。

 主導権を握った官邸は、さっそく大盤振る舞いの補正予算編成・経済対策を行おうとしている。その規模は、「消費税率引き上げ幅3%のうちの2%分を還元する」という意味で5兆円だという。