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経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

温暖化ガスの中期排出削減目標
重い国民負担は国益に繋がるのか

町田 徹 [ジャーナリスト]
【第80回】 2009年6月19日
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 麻生太郎首相は6月10日、自ら記者会見に臨み、「温室効果ガス排出削減の中期目標」を発表した。CO2の排出を「2005年に比べて15%削減する」というのが、その目標だ。

 この記者会見で目立ったのは、「我々世代の責任」「日本の責任と覚悟」「私の考えと決断」といった勇ましい言葉を連ねて、自身の指導力の立派さを印象付けようと躍起な麻生首相の姿だった。

 しかし、この中期目標を実現するためには、お金に換算して、世帯当たり7万6000円の重い負担が必要になる。

 これで本当に地球温暖化を防止し、異常気象を避けられるのならば、安いコストかもしれない。ところが、事はそんなに簡単と言えない。

 というのは、日本政府が相変わらずの外交音痴だからである。このままでは、欧州連合や米国、中国の仕掛けた罠に陥り、“不平等条約”の「京都議定書」体制を是正できない恐れは大きい。言い換えれば、日本国民だけが実現するアテのない無駄な負担を強いられるという最悪の事態を招きかねないのだ。

高い目標値を誇示して
自画自賛した麻生首相

 「政府インターネットテレビ」で確認できるので、興味のある方は是非、ご確認いただきたい。

 この日の麻生首相は、いつになく神妙な面持ちだった。そして、この日の演説を、温暖化によって海水面が上がり、国土が沈没の危機にさらされている太平洋の島国キリバスの苦境を紹介することから始めたのだった。首相はその後、

 「地球温暖化の防止は、今を生きております我々世代の責任だと思います。今日は、日本の責任と覚悟を、国民の皆さんと共有したいと思います」

と芝居がかった調子で演説を続けた。

 そのうえで、2020年までのCO2削減の国際的な中期目標の交渉に向けて、

 「(日本が)世界をリードするためには、一歩前に出て倍の努力を払う覚悟を持つべきだ。私は、あえて2005年に比べて15%の削減を目標とする決断をしております」

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町田徹 [ジャーナリスト]

1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。


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