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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

金融危機克服が50%近く進むなか、
過剰設備と過剰雇用に苦悩する日本経済

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第39回】 2009年10月3日
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 IMFは、9月30日に、10月版の「国際金融安定性報告書(GFSR)」において、世界金融機関の潜在的な損失の推計を明らかにした。

 それによると、2007年夏の最初の危機から2010年末までの間に金融機関の被る損失の総額は合計で3.4兆ドル(約305兆円)である。これは、前回4月の報告の推計に比べると、約6000億ドルの改善になっている。

 これまで損失見通しは、改定されるたびに拡大を続けてきたが、今回初めて損失見通し額が縮小になった。

 保険会社やヘッジファンドなどを除いて銀行だけを見ると、【図表1】に示すように、損失額の合計は2兆8090億ドルであり、地域別の内訳は、アメリカが1兆0250億ドルで、欧州(ユーロ圏)8140億ドル、イギリス6040億ドル。日本を含むアジアの主要国は1660億ドルとなっている。このように、アメリカの銀行の損失額が最も大きいが、イギリスやユーロ圏の銀行の損失もかなり大きい。

 図表からは、つぎのようにいくつかの点が見て取れる。これは、今回の金融危機の内容を理解する上で重要なことだ。まず、世界全体について見ると、つぎのとおりだ。

(1)銀行の損失約2兆8090億ドルの約3分の2は貸付で生じており、証券化商品によるものは3分の1程度である。金融危機の原因としてしばしば証券化が指摘されるが、額的に言えば、貸付の破綻によるもののほうが2倍ほど多い。

(2)証券の損失9160億ドルのうち、3分の2近くはアメリカ以外で生じている。証券化商品はアメリカが供給したものと考えられるので、アメリカで生じた金融危機が証券化商品を通じて全世界に伝播したことがわかる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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