さらに、ぶどう糖と果糖を摂取した後では、満腹感が違うのです。ブドウ糖を摂取すると、インスリンや血糖値を上昇させ、食欲を抑えるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)の分泌が増加して、食欲を刺激するグレリンというホルモンの分泌を抑えます(本連載の第1回も参考にして下さい)。ですから、ぶどう糖を摂取すると満足感を得て、それ以上は食べものを欲しません。ところが果糖は、インスリン分泌の刺激が弱く、血糖値も直接的には上げません。さらに、GLP−1の分泌も増えず、グレリンの産生が抑制できません。結果、果糖を摂っても満腹感が得られず、また空腹感が減らず、食べものを欲したり食べ過ぎたりする可能性があると考えられるのです。

 こうした食欲をコントロールしているのが、摂食中枢と満腹中枢が存在する脳の視床下部です。視床下部と、さらに脳内報酬系が連携して、空腹感や満腹感を調節しているのです。これまでにラットの実験で、果糖を脳に注入すると食べものを探し始め、ぶどう糖を注入すると食べものの摂取が減ることが証明されてきました。ところが、ぶどう糖と果糖を摂ったときになぜ摂食行動が違ってくるのか、私たちヒトの脳の各領域との関係が分かってきたのです。

 最近も、イェール大学の研究者たちが、新しい脳機能イメージング法を利用して、ぶどう糖と果糖の摂取後の脳の活性化の違いを調べました。

 対象は、健康な成人ボランティア20人(平均年齢31歳)です。この結果、ぶどう糖の摂取後は食欲が減少したのに対して、果糖ではこのような反応は起こりませんでした。やはりぶどう糖の摂取後は空腹感が減り満足感を得たのに対して、果糖はぶどう糖に比べて、空腹感を減らすことができず、満腹感を得にくいということが明らかになりました。

私たちは普段、果物や野菜などに含まれる自然な果糖と、加工食品や清涼飲料水に含まれる果糖、2種類の果糖を摂取しています。後者はたいてい、「異性化糖」という形で摂取することが多く、大量の果糖を一気に摂取する心配があります。これに対し、果物や野菜に含まれる果糖は、食物繊維などの作用でゆっくり吸収されます。さらに、果物や野菜にはビタミンやミネラルなどの栄養素も豊富に含まれていますので、私たちの健康にメリットがあります。

 ですから、果物や野菜などの自然な果糖を適量摂取するのはお薦めできる一方、異性化糖入りの飲み物や加工食品の摂り過ぎには注意する必要があるのです。


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