データ分析はなかなか思うようには進まないもの。でも、ふと思いついた疑問について調べたデータで気づいた面白い特徴を、周囲の人との会話のネタに使ってみてください。相手が納得したり驚いたりするほか、数字は説得力や交渉力を補強するので、そうしたコミュニケーションは慣れると楽しくなります。それこそが、データ読解・活用の達人への道に踏み出す第一歩なのです!

 データを調べて気づいた内容が、正しいこともあれば、まちがっていることもあるでしょう。データをたくさん調べたのに、なにも気づきが得られないときもありそうです。しかし、仕事のなかで、あるいは生活のなかで、なにか疑問を感じたら、まずは基本データの確認をしてみる習慣を身につけると、あなたのデータ読解・活用能力は着実に高まるはずです。

 いきなり、ジニ係数のデータの問題点に自力で気づけるレベルのデータ読解力をめざす必要はないでしょう。ジニ係数が計算方法に凝ったデータだからこそ、特殊な問題が起きやすいのです。たいていの場合、ふつうの感覚でデータを調べればいいのです。また、過去に調べた事があるデータを再びチェックしてみることも大切です。“ダメでもともと”という気持ちで、自分が調べるのに慣れたデータを使おうと試してみるべきです。

 ジニ係数のように抽象的なデータ(凝った統計)は、たとえそれをカンペキに使いこなせたとしても、上司や同僚に結論を説明して納得してもらいにくいという問題があります。洗練された統計分析によって導かれた結論にも、同じような問題があります。

 それに比べて、図表1のように、高校生や大学生がいる世帯のケータイへの支出が、学生のいない世帯での支出を大幅に上回るという単純なデータは、それに基づく提案の説得力を増します。ビジネスでたくさんの人を動かす提案をするときには、シンプルなデータほど納得しやすいから、説得に使いやすいという原理を忘れてはいけません。

シンプルであるがゆえに説得力があるデータを都合よくみつけられるようになりたいなら、たくさんのデータを読む経験を積むことです。そのためには、ちょっとでも気になる疑問が浮かんだら、すぐにデータを探して調べる習慣を身につけることです。経験を積んで慣れることで、短時間で都合のいいデータが見つけられるようになるでしょう。

 統計学の深い専門知識をもつ人が、いろいろなデータの読みこなしに強いのは、ひとつには多彩な分析手法を熟知しているからです。しかし、もうひとつ、過去に膨大なデータを読みこなしてきた経験によって、直感的にみるべきデータに自然に目がいく、という点も大きいと思われます。